翌朝、リリアは診療所のベッドで目を覚ました。窓から差し込む朝日がまぶしい。体はまだ少しだるいが、魔力は完全に回復している。昨夜の戦いで、自分がどれほど強くなったかを実感していた。
「リリアさん、目が覚めたんですね」
診療所の入り口から、村の少女が顔を出す。彼女は昨夜、リリアに助けられた子供の一人だ。
「ええ、おはよう。ユーリさんは?」
「ユーリさんはまだ寝てますよ。肩の傷が痛むみたいで」
リリアは心配になり、ユーリの様子を見に行こうとした。しかし、少女が止める。
「あの、リリアさん。村の畑が大変なんです」
「畑?」
「はい。今朝、見回りに行ったら、作物が全部枯れてしまっていて……」
リリアは驚いて、すぐに畑へ向かった。
畑に着くと、そこは見渡す限りの枯れ野原だった。昨日まで青々と育っていた野菜や穀物が、すべて萎れて茶色くなっている。村人たちが集まり、嘆き悲しんでいた。
「どうして……昨日まで元気だったのに」
「これじゃ、冬を越せない……」
リリアは土を手に取り、匂いを嗅いだ。すると、かすかに腐敗したような異臭がする。
「この匂い……もしかして、呪いの痕跡?」
リリアは昨夜、クラウディアの手先が撒いた何かを思い出した。彼らは村の土壌に呪いを仕掛けていたのだ。
「私の回復魔法で、畑全体を蘇らせることができるはず」
リリアは決意し、畑の中央に立った。村人たちは不安そうに見守る。
「リリア様、無理はなさらないでください」
「大丈夫です。私の力を見せます」
リリアは両手を広げ、魔力を集中させた。彼女の体が淡い光に包まれる。そして、地面に向かって回復魔法を放った。
「『大地よ、蘇れ』!」
光が畑全体に広がり、枯れた植物がみるみるうちに緑を取り戻していく。村人たちは歓声を上げた。
「すごい! 生き返った!」
「リリア様、ありがとうございます!」
しかし、リリアの顔色が急に悪くなった。魔力の消耗が激しく、視界が揺れる。
「はぁ……はぁ……」
「リリア様!」
リリアはその場に倒れ込んだ。村人たちが慌てて駆け寄る。
「リリア様、しっかりしてください!」
「大丈夫ですか?」
リリアは意識を手放しそうになりながらも、かすかに微笑んだ。
「畑は……蘇った……?」
「はい、でもあなたが倒れてしまって!」
その時、診療所からユーリが現れた。彼は肩を押さえながら、必死の形相で歩いてくる。
「リリア!」
ユーリはリリアのそばに駆け寄り、抱き起こした。
「バカ、無理をするな!」
リリアはユーリの顔を見て、ほっとしたように微笑んだ。
「ユーリさん……畑、復活しましたよ」
「そんなことはどうでもいい! 君が倒れてどうする!」
ユーリは怒りと心配が入り混じった表情で、リリアを叱った。村人たちは二人の様子を心配そうに見守る。
ユーリはリリアを抱きかかえたまま、診療所へ連れて行こうとした。しかし、リリアは首を振る。
「大丈夫です。少し休めば回復します」
「君はさっき、魔力を使い果たしたんだぞ。そんな状態で動けるわけがない」
ユーリは厳しい口調で言うが、その目は優しさに満ちていた。リリアはその目を見て、胸が熱くなった。
「ユーリさん、ごめんなさい。心配をかけました」
「謝ることはない。ただ、君は一人で抱え込まなくていいんだ」
ユーリはリリアの手を握り、真剣な目で言った。
「僕もいる。村人たちもいる。君が倒れたら、みんなが悲しむんだ」
リリアはその言葉に、涙が溢れそうになった。幼い頃から孤児院で虐げられ、教会でも利用されてきた彼女は、誰かに心配されることに慣れていなかった。
「ユーリさん……ありがとうございます」
リリアはユーリの胸に顔を埋め、そっと涙を拭った。ユーリは優しくリリアの背中を撫でた。
「もう無理はしないでくれ。畑の復興は、みんなでやればいい」
「はい……そうします」
リリアは頷き、ユーリに支えられながら立ち上がった。村人たちは二人の姿を見て、温かい拍手を送った。
「リリア様、本当にありがとうございます」
「これで冬を越せます!」
リリアは村人たちの感謝の言葉に、心が満たされた。しかし、同時に自分の限界も痛感していた。
「畑の一部は蘇ったけど、まだ全体は復活していない。魔力を回復させてから、また挑戦しないと」
リリアはそう呟き、今後の計画を練り直す必要を感じた。
診療所に戻ると、ユーリはリリアをベッドに寝かせ、薬草茶を淹れてくれた。リリアはその温かいお茶を飲みながら、ほっと息をつく。
「ユーリさん、本当にありがとうございます」
「何度も言うな。君が無事ならそれでいい」
ユーリはリリアの隣に座り、優しく微笑んだ。リリアはその笑顔を見て、心が安らぐのを感じた。
「でも、畑の呪いはまだ完全には解けていない。また、あの男たちが来るかもしれない」
リリアは不安を口にする。ユーリは真剣な表情で頷いた。
「そうだな。だが、君は一人で抱え込まなくていい」
ユーリがリリアに「君は一人で抱え込まなくていい」と優しく諭す。






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