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📖 追放された聖女は辺境でスローライフを満喫する~最強の回復魔法で村を復興して、イケメン薬師に愛されちゃいました~

辺境への追放・代償

2.0K words

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冷たい風が頬を刺す。リリアは、見知らぬ廃村の入り口に一人で立っていた。背負っているのは、小さな革袋一つだけ。中には、数枚の銅貨と、乾いたパンが一つ。それ以外は、何も持たされなかった。 「……ここが、私の新しい居場所なのね」 声は、風に溶けて消えた。周囲には、崩れかけた家々が点在し、雑草が生い茂っている。かつては人が住んでいたであろう村は、今は見捨てられたように静まり返っていた。 リリアは、自分が聖女として過ごしてきた日々を思い出す。孤児院で虐げられ、教会に拾われてからは、聖女としての力のために利用されてきた。癒やしの力があると知ったのは、五歳の頃。それからずっと、祈りと奉仕の日々だった。 しかし、ある日突然、聖女長クラウディアに濡れ衣を着せられた。『聖女の力が弱まった』『悪魔と通じている』という偽りの罪。魔力を封じられ、辺境へ追放された。 「もう、誰も信じない」 リリアは、自分に言い聞かせるように呟いた。信じたところで、裏切られるだけだと知っている。 村の中を歩きながら、リリアは何か使えるものはないかと探した。しかし、どの家も荒れ果て、生活の痕跡はほとんど残っていない。唯一、村の中央にある井戸だけが、かろうじて形を保っていた。 「水は確保できるわね」 リリアは井戸の水を汲み、喉を潤した。冷たい水が、疲れた体に染み渡る。 「まずは、寝る場所を見つけないと」 リリアは、一番しっかりしていそうな家を選び、中に入った。床には藁が敷かれ、簡易的なベッドになりそうだった。 荷物を下ろし、リリアは一息つく。しかし、すぐに空腹を覚えた。乾いたパンをかじりながら、今後のことを考える。 「畑を耕して、野菜を作って……それで何とか生きていけるかしら」 リリアは、孤児院で教わった植物の知識を思い出す。薬草の育て方や、食べられる野草の見分け方。それらが、今の自分を支えてくれるだろう。 「まずは、明日から始めましょう」 リリアは、藁の上に横になった。天井の穴から、星が見える。 「……寒い」 夜風が、体を冷やしていく。リリアは、自分の体を抱きしめるようにして、目を閉じた。 明日から、新しい生活が始まる。不安と、ほんの少しの期待を胸に。 翌朝、リリアは早くから目を覚ました。まだ薄暗い中、村の周囲を探索することにした。食料になるもの、薬草になるものを見つけるためだ。 村の外れには、森が広がっている。リリアは、慎重に森の中へ足を踏み入れた。 「……これは、カモミールね。お茶にできるわ」 足元に生えている植物を、リリアは次々と確認していく。孤児院で学んだ知識が、今になって役立っている。 しばらく歩くと、リリアは異変に気づいた。茂みの陰で、何かが動いた気がしたのだ。 「……誰かいるの?」 リリアは、声をかけてみた。しかし、返事はない。代わりに、苦しそうなうめき声が聞こえてきた。 リリアは、恐る恐る茂みに近づいた。すると、そこには一人の少年が倒れていた。年は十歳くらいだろうか。顔は真っ赤に腫れ上がり、額には脂汗が浮かんでいる。 「ねえ、大丈夫?」 リリアは、少年の体を揺さぶった。しかし、少年は反応しない。熱が高いようだ。 「このままじゃ、死んでしまう」 リリアは、少年を抱き起こした。体は驚くほど軽い。 「村に連れて帰って、手当てをしないと」 リリアは、少年を背負って村へ戻ろうとした。しかし、その時、森の奥から低いうなり声が聞こえてきた。 「……魔獣?」 リリアは、背筋を凍らせた。かつて、聖女として魔獣と戦ったことはある。しかし、今の自分には魔力がない。まともに戦うことはできない。 「どうしよう……」 リリアは、必死に考えた。このままここにいれば、魔獣に襲われるかもしれない。しかし、少年を置いて逃げるわけにもいかない。 「……走るしかない」 リリアは、少年を背負ったまま、村に向かって全力で走り出した。背後から、魔獣の足音が迫ってくる。 「はぁ……はぁ……」 息が切れる。足がもつれる。それでも、リリアは走り続けた。 「もう少し……もう少しだから!」 村の入り口が見えてきた。しかし、その時、リリアの足が石につまずいた。 「あっ!」 リリアは、少年をかばうようにして倒れた。膝を強く打ち、痛みが走る。 「……くっ」 リリアは、歯を食いしばって立ち上がろうとした。しかし、足が動かない。 「このままじゃ……」 リリアは、絶望的な気持ちで後ろを振り返った。しかし、魔獣の姿はなかった。どうやら、森の奥へ戻っていったようだ。 「……助かった」 リリアは、ほっと息をついた。しかし、少年の熱は上がる一方だ。 「このままじゃ、本当に死んでしまう」 リリアは、少年を再び背負い、何とか村の家までたどり着いた。 「水……冷たい水で体を冷やさないと」 リリアは、井戸から水を汲み、布を濡らして少年の額に乗せた。しかし、それだけでは足りない。 「薬草が必要……でも、森には魔獣がいる」 リリアは、自分の無力さを噛みしめた。魔力があれば、回復魔法で一瞬で治せるのに。しかし、今の自分には、知識しかない。 「……知識でも、何とかできるはず」 リリアは、少年の症状を思い出した。高熱、腫れ、苦しそうな呼吸。これは、もしかしたら……。 「毒草による中毒かもしれない」 リリアは、孤児院で教わったことを思い出す。特定の毒草を食べると、こうした症状が出ることがある。 「解毒には、オオバコの葉が効くはず」 リリアは、決意した。再び森へ行くのだ。魔獣の危険を冒してでも、少年を助けるために。 「行くわ」 リリアは、手近にあった棒を拾い、武器の代わりにした。そして、再び森へと足を踏み入れた。 リリアは、森の中で慎重にオオバコを探した。魔獣の気配に怯えながらも、少年を助けるという思いが、恐怖に打ち勝たせた。 「……あった!」 リリアは、オオバコの葉を見つけた。急いで摘み取り、村へ戻る。 少年の家に駆け込み、リリアはオオバコの葉をすりつぶして、その汁を少年の口に含ませた。 「……飲んで」 少年は、無意識にごくりと喉を動かした。リリアは、何度か繰り返して、薬を与えた。 しばらくすると、少年の呼吸が落ち着いてきた。熱も、少しずつ下がっているようだ。 「……よかった」 リリアは、ほっと胸をなで下ろした。しかし、まだ油断はできない。 「このまま、様子を見ないと」 リリアは、少年のそばに座り、一晩中看病した。時折、濡れ布で額を冷やし、水を飲ませた。 夜が明け、朝日が差し込む頃、少年はようやく目を覚ました。 「……ここは?」 少年は、ぼんやりと周囲を見渡した。 「大丈夫? 気分はどう?」 リリアが、優しく声をかけた。 「……あなたは?」 少年は、リリアの顔を見て、不思議そうに尋ねた。 「私はリリア。あなたが倒れていたのを見つけたの」 リリアは、簡単に説明した。少年は、まだぼんやりしているようだったが、自分の置かれた状況を理解したようだ。 「……ありがとうございます」 少年は、かすれた声でお礼を言った。 「いいえ。でも、どうしてこんな場所に一人でいたの?」 リリアが尋ねると、少年はうつむいた。 「……村の薬師さんに、薬草を採ってきてほしいって頼まれて。でも、森で迷ってしまって……」 少年は、そう言って目を潤ませた。 「そうだったの。でも、もう大丈夫よ。ゆっくり休んで」 リリアは、少年の頭を優しく撫でた。 その時、家の外から足音が聞こえてきた。そして、戸が勢いよく開かれた。 「おい、坊主! 無事か!」 入ってきたのは、一人の男だった。年の頃は二十代後半。すらりとした体つきで、鋭い眼差しが印象的だ。手には、薬草の入った籠を持っている。 「……あなたは?」 リリアが尋ねると、男はリリアを一瞥し、少年に視線を移した。 「俺は、この村の薬師のユーリだ。坊主が森で行方不明になったと聞いて、探していたんだ」 ユーリは、そう言って少年の状態を確認した。 「熱は下がっているな。お前が手当てをしたのか?」 ユーリは、リリアに問いかけた。 「はい。オオバコの葉をすりつぶして、飲ませました」 リリアが答えると、ユーリは少し驚いた表情を見せた。 「……よく知っているな。この辺りでは、オオバコはあまり使わないんだが」 ユーリは、リリアをじっと見つめた。その視線に、リリアは少し居心地の悪さを感じた。 「……孤児院で、薬草のことを教わったので」 リリアは、そう答えた。ユーリは、さらに興味深そうにリリアを見る。 「そうか。ところで、お前は何者だ? こんな廃村に、一人で何をしている」 ユーリの問いかけに、リリアは言葉を詰まらせた。 リリアは、ユーリの問いかけに答えようとした。しかし、何と説明すればいいのか分からない。聖女だったこと、追放されたこと。すべてを話すべきか、それとも隠すべきか。 村の薬師ユーリが現れ、リリアに「ここで何をしている」と問い詰める。
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