「追放には裏がある」というユーリの言葉に、リリアは息を呑んだ。
「どういう意味ですか?」
ユーリは答えず、窓の外を見つめたままだった。リリアがさらに問い詰めようとしたその時、診療所の扉が激しく叩かれた。
「ユーリさん!大変です!」
村の若者が息を切らして飛び込んできた。
「子供が急に高熱を出して、もうぐったりしてるんです!」
ユーリはすぐに立ち上がり、医療鞄を手に取った。
「リリア、来てくれ」
リリアは頷き、後を追った。
村の家に着くと、幼い男の子が布団の上でぐったりとしていた。顔は真っ赤に腫れ上がり、息も荒い。ユーリが診察を始める。
「これは……ただの風邪ではないな」
ユーリは眉をひそめた。
「何かの毒か、呪いかもしれない」
リリアは薬草の知識を総動員して、手持ちの薬草で応急処置を試みた。だが、子供の容態は悪化する一方だった。
「このままでは、もたない」
ユーリは診療所に戻り、特効薬を探すと言った。だが、リリアはある薬草が森に生えていることを思い出した。
「私が採ってきます」
ユーリは反対したが、リリアは聞かなかった。
「子供の命がかかっているんです」
リリアは夜の森へ駆け出した。
夜の森は、昼間とは違う顔を見せていた。月明かりが木々の間から差し込み、地面には不気味な影が揺れる。リリアは足を速めた。
目的の薬草は、森の奥の湿地に生えている。リリアは幼い頃に孤児院で教わった知識を頼りに、慎重に進んだ。
しばらく歩くと、かすかに甘い香りが漂ってきた。目的の薬草だ。リリアはほっと息をつき、しゃがみ込んで薬草を摘もうとした。
その時、背後に気配を感じた。
「誰だ?」
振り返ると、黒いローブをまとった男が立っていた。顔はフードで隠れているが、手に短剣を持っている。
「お前がリリアか」
男は低い声で言った。
「聖女長からの命令だ。お前を消せと」
リリアは背筋が凍った。クラウディアが追手を放ったのだ。
「逃げろ!」
リリアは薬草を掴むと、全力で走り出した。だが、男は素早く追ってくる。
「逃がすか!」
男が短剣を振りかざす。リリアは身をかわしたが、腕に鋭い痛みが走った。
「っ!」
血が滴る。だが、リリアは立ち止まらない。
「この森を抜ければ、村だ!」
リリアは必死に走った。しかし、足がもつれて転んでしまう。
「もう終わりだ」
男が短剣を振り上げた。リリアは目を閉じた。
その時、男が突然、苦しみ始めた。
「ぐあっ!」
男は地面に膝をつき、胸を押さえた。リリアは驚いて目を開ける。
「何が……」
男は何かに襲われたようにのたうち回り、やがて動かなくなった。
リリアは呆然とそれを見つめた。だが、腕の傷が痛み、意識が遠のきかける。
「特効薬……子供を助けなきゃ」
リリアは薬草を握りしめたまま、力尽きて倒れた。
リリアが意識を失う直前、誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえた。
「リリア!」
聞き覚えのある声。ユーリだ。
ユーリはリリアを抱き起こし、その顔を見て安堵の息をついた。
「無茶をするな」
ユーリはそう言って、リリアを強く抱きしめた。リリアはその温もりに、安心して涙が溢れた。
「ユーリさん……子供は……」
「大丈夫だ。もう手当てをした。お前が採ってきた薬草で、きっと助かる」
ユーリはリリアの腕の傷を見て、眉をひそめた。
「深い傷だ。すぐに手当てをしないと」
ユーリはリリアを抱きかかえ、立ち上がった。
「帰ろう」
リリアはユーリの胸に顔を埋め、その温もりに身を委ねた。
「ありがとうございます」
「礼を言うのは俺の方だ。お前が無事でよかった」
ユーリの声は、いつもより優しかった。リリアは、この人のそばにいれば、もう大丈夫だと思えた。
だが、リリアの心には、クラウディアの影がよぎる。
「なぜ、私を狙うの?」
ユーリは黙ったまま、リリアを抱く腕に力を込めた。
「……その答えは、きっとすぐにわかる」
ユーリの言葉に、リリアは不安を感じながらも、今はこの温もりに身を任せることにした。
リリアはユーリの腕の中で、意識を手放しそうになった。
「ユーリさん……」
「黙ってろ。今は休め」
ユーリはそう言って、リリアを抱きかかえたまま、村へ向かって歩き出した。
リリアは、ユーリの心臓の音を聞きながら、目を閉じた。
瀕死のリリアの前に、ユーリが現れ、「無茶をするな」と抱きかかえる。






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