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📖 追放された聖女は隣国で公爵様と契約結婚して幸せになります

呪いの真実・公然の挑戦

1.4K words

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レオンハルトの手の温もりが、まだ私の指先に残っている。先ほどまで執務室で交わした会話の余韻が、胸の奥でくすぶっていた。しかし、その温もりも、今は地下牢の冷たい空気に掻き消されそうだ。私たちは、スパイの存在を察知した後、逆にその情報を利用する計画を立てた。リリアーナはわざとスパイに聞こえるように、聖遺物とは別の場所へ向かうと話し、レオンハルトがそれを後押しした。 「では、明日の夜、聖遺物を探しに東の離れへ向かう。あそこなら、教会の目も届きにくい」 レオンハルトが、わざと大きな声で言った。私はそれに応えるように、頷いた。 「ええ、あそこに隠されているはずです。教会の記録には、確かにそう書かれていましたから」 私たちは、スパイが潜むであろう書棚の影に向かって、芝居を打った。執務室には、確かに誰かが潜んでいた。レオンハルトの鋭い視線が、一瞬そちらを捉えていた。 「よし、ではその計画で進めよう。今夜はもう休め」 レオンハルトがそう言って、私たちは執務室を後にした。廊下に出ると、彼は私の耳元に囁いた。 「スパイは、おそらく執事の一人だ。今、部下に尾行させている」 私は息を呑んだ。まさか、身近にスパイがいるとは。 「では、私たちの計画は…」 「ああ、偽情報だ。本当の標的は、あのスパイだ」 レオンハルトは冷徹な笑みを浮かべた。私たちは、地下牢へと向かう。そこには、先ほど捕らえたスパイが拘束されているはずだ。 地下牢は、石造りの壁から染み出す湿気で満ちていた。松明の火が揺らめき、壁に影を落とす。奥の牢屋には、一人の男が鎖で繋がれていた。彼は、公爵邸の執事の一人、アルバートだった。 「アルバート、お前がセシリアのスパイだな」 レオンハルトが冷たい声で問いかける。アルバートは顔を上げ、嘲るように笑った。 「お気づきでしたか。ですが、もう遅いです。聖女様は、すでにあなたたちの計画をご存知です」 「ふん、あの偽情報に引っかかったか?」 レオンハルトが嘲笑すると、アルバートの表情が一瞬揺らぐ。 「偽情報だと? では、本当の狙いは何だ?」 「それを教えると思うか?」 レオンハルトが一歩前に出る。私は彼の腕を掴んで制した。 「待ってください。私が話します」 私はアルバートの前に立った。彼は、私を睨みつける。 「あなたは、セシリアに何を報告していたのですか?」 「…聖女様に、あなたたちの動向を逐一報告していた。だが、それはもう終わりだ。私は捕まった。どうせ殺されるなら、何も話すつもりはない」 アルバートは頑なに口を閉ざす。私はため息をつき、レオンハルトを見た。 「拷問はしません。でも、交渉はできます」 私はアルバートに向き直り、穏やかな声で言った。 「あなたの家族は、セシリアに人質に取られているのではありませんか?」 アルバートの目が驚きに見開かれる。 「なぜ、それを…」 「あなたが、故郷の妹に送った手紙を読んだことがあります。公爵邸の書庫に、コピーが残っていましたから」 私は嘘をついた。実際には、彼の行動を観察して推測しただけだ。しかし、その推測は当たっていたようだ。 「妹さんは、確か幼い子がいるのでしょう。もし、あなたが協力してくれれば、私たちが保護します」 アルバートはしばらく沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。 「…分かった。話そう。聖女様は、あなたの故郷の教会に手を回している。聖遺物は、もうそこにはないかもしれない」 私は息を呑んだ。まさか、セシリアがそこまで先回りしているとは。 「どこへ?」 「それは知らない。だが、聖女様は何かを企んでいる。あなたを嵌めるための罠を張り巡らせている」 アルバートの言葉に、私は拳を握りしめた。セシリアは、私の故郷の教会を利用しようとしているのか。 「他には?」 レオンハルトが問いかける。アルバートは首を振った。 「それだけだ。私は使い捨ての駒に過ぎない」 私はレオンハルトを見た。彼は頷き、部下にアルバートを連れて行くよう指示した。 「彼の家族を保護しろ。そして、この情報を元に、次の手を考えよう」 私たちは地下牢を出た。 地下牢を出ると、レオンハルトは私の肩に手を置いた。 「よくやった。お前の機転で、重要な情報を得られた」 私は少し照れくさくて、視線をそらした。 「いえ、あなたが偽情報を流してくれたからです」 「だが、セシリアが聖遺物を移動させたとなると、計画を練り直さなければならない」 レオンハルトは顎に手を当てて考え込んだ。私は、彼の横顔を見つめた。彼は、いつも冷静で強い。しかし、その瞳の奥には、深い悲しみが潜んでいる。 「レオンハルト様」 私は、彼の名を呼んだ。彼は少し驚いた顔をしたが、すぐに微かに口元を緩めた。 「なんだ?」 「あなたは、なぜそこまで私のために動いてくれるのですか?」 私は、ずっと気になっていたことを尋ねた。彼は少し間を置いて、答えた。 「お前は、俺の妻だからだ。それに、お前の力が必要だ」 「でも、それは契約のためだけですか?」 私の問いに、彼は黙り込んだ。しばらくして、彼は静かに言った。 「…それだけではないかもしれない」 その言葉に、私の心臓が高鳴った。彼は、私の目を見つめ、続けた。 「お前と過ごすうちに、お前のことを知りたいと思うようになった。お前の過去も、お前の力も、お前のすべてを」 私は、彼の言葉に胸が熱くなった。彼は、私のことを少しずつだが、大切に思ってくれているのかもしれない。 「私もです。あなたのことをもっと知りたい」 私はそう言って、微笑んだ。彼は、少し照れたように目をそらした。 「…さて、聖遺物の行方を追わなければならない。だが、まずはお前の安全を確保する」 彼は、私の手を取った。その手は、温かかった。 「これからは、どこへ行くにも俺がそばにいる。一人で行動するな」 「はい」 私は頷いた。彼と一緒なら、どんな困難も乗り越えられる気がした。 その時、執事が慌てて駆け寄ってきた。 「公爵様、至急の報せが」 レオンハルトが手紙を受け取り、封を切る。彼の表情が、一瞬で強張った。 「どうしました?」 私は尋ねた。彼は、手紙を私に渡した。そこには、こう書かれていた。 「セシリアが、あなたの故郷の教会に既に手を回し、聖遺物を移動させた可能性が高い」 リリアーナはスパイを尋問し、聖遺物の行方について聞き出す。
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