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📖 追放された聖女は隣国で公爵様と契約結婚して幸せになります

追放と契約・公然の挑戦

1.4K words

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廊下の影が不自然に動いた瞬間、リリアーナは足を止めた。レオンハルトも同じ気配を感じ取ったのか、鋭い視線を暗がりに向ける。 「誰かいる」 レオンハルトが低く呟くと、影から一人の使用人が現れた。彼は慌てた様子で頭を下げる。 「も、申し訳ございません。夜の見回りをしておりました」 だが、その説明は不自然だった。見回りならば、なぜ物陰に隠れていたのか。リリアーナは使用人の手元に目をやると、何かを握りしめているのが見えた。 「その手にあるものは?」 リリアーナが問い詰めると、使用人は顔を強張らせた。レオンハルトが一歩前に出る。 「答えろ」 冷たい声に、使用人は震え上がった。彼は握っていた紙を差し出した。それは、公爵邸の見取り図だった。 「これは……誰に頼まれた?」 レオンハルトの問いに、使用人は口ごもる。だが、リリアーナはその図面に書き込まれた印に気づいた。それは、自分の部屋の位置を示していた。 「私の部屋に印が……」 リリアーナが呟くと、使用人は観念したように告白した。 「教会から……聖女様の動向を探るよう命じられて……」 その言葉に、リリアーナは息を呑んだ。セシリアが、まだ自分を狙っている。レオンハルトは使用人を警備に引き渡すよう指示し、リリアーナを執務室へと連れて行った。 執務室に戻ると、レオンハルトは机の上に一通の書状を置いた。それは、教会からの公式な抗議文だった。 「教会は、お前が聖女の力を悪用したと非難している。グレイスラント国内の貴族たちにも、その噂が広がっているらしい」 リリアーナは抗議文を手に取り、読んだ。そこには、彼女が治癒の力を私利私欲のために使ったという虚偽の内容が記されていた。 「これは、全くの嘘です。私は一度も、力を悪用したことなどありません」 リリアーナは強く言い放った。だが、レオンハルトは冷静に指摘する。 「お前の言葉だけでは、教会の権威には勝てない。貴族たちは、教会の非難を真に受けるだろう」 リリアーナは唇を噛んだ。確かに、教会の権威は絶対的だ。だが、黙っているわけにはいかない。 「公爵様、私に反論の機会をいただけませんか? 公式の場で、自らの潔白を証明したいのです」 レオンハルトは、しばらくリリアーナを見つめていた。その瞳には、迷いの色が浮かんでいた。 「公式の場で、教会に反論するのは危険だ。お前を追放した教会が、さらに敵意を強めるかもしれない」 「それでも、私は戦います。ここで逃げてしまえば、一生後悔する」 リリアーナの言葉に、レオンハルトはため息をついた。だが、その口元にはわずかに笑みが浮かんでいた。 「わかった。次の貴族会議で、お前の弁明の場を設けよう。私も同席する」 リリアーナは、その言葉に胸をなで下ろした。だが、レオンハルトは続ける。 「ただし、教会が送り込んだスパイがいる以上、お前の安全は確保しなければならない。警備を強化する」 リリアーナは頷いた。だが、その時、執務室のドアがノックされた。入ってきたのは、警備責任者だった。 「公爵様、不審な男を捕らえました。教会の紋章が入った短剣を所持していました」 リリアーナは、その言葉に背筋が凍る思いがした。セシリアは、スパイだけでなく、刺客まで送り込んできたのだ。 「その男を尋問しろ。誰の指示か、吐かせろ」 レオンハルトの命令に、警備責任者は頭を下げて退出した。リリアーナは、レオンハルトを見上げた。 「公爵様、これは……セシリアの仕業ですか?」 「可能性が高い。だが、証拠がなければ動けない。お前は、しばらくこの部屋で待機していろ」 レオンハルトはそう言うと、リリアーナに背を向けた。だが、その背中は、どこか守るべきものを守るという決意に満ちていた。 その夜、リリアーナは執務室で待機していた。レオンハルトは、警備の確認に出たまま戻ってこない。不安な気持ちを抱えながら、リリアーナは窓の外を見つめた。 そこに、ドアが開く音がした。振り返ると、レオンハルトが立っていた。 「警備は強化した。しばらくは安心できるだろう」 リリアーナはほっと息をついた。だが、レオンハルトの表情は硬い。 「公爵様、何かありましたか?」 「いや、ただ……教会の動きが気になる。セシリアは、お前を追放しただけでは飽き足らないようだ」 リリアーナは、自分の手を見つめた。かつて聖女として崇められていた自分が、今は教会に命を狙われている。その現実に、心が揺れる。 「公爵様、私は……どうすればいいのでしょうか」 リリアーナの声は、少し震えていた。レオンハルトは、そんな彼女を見つめ、やがて口を開いた。 「お前は、自分の信じる道を行けばいい。私は、お前の味方だ」 その言葉に、リリアーナは目を丸くした。いつも冷たい態度のレオンハルトが、こんな言葉をかけてくれるとは思わなかった。 「でも、私はただの契約妻です。あなたに守られる義理は……」 「契約でも、今は私の妻だ。それに、お前は私の呪いを解く手がかりを見つけてくれた。その恩は、返さなければならない」 レオンハルトは、そう言って小さく笑った。それは、初めて見せる優しい笑顔だった。リリアーナは、胸が温かくなるのを感じた。 「ありがとうございます、公爵様」 リリアーナが微笑むと、レオンハルトはそっと目をそらした。 「さあ、もう休め。明日は、貴族会議の準備がある」 リリアーナは頷き、部屋を出ようとした。その時、レオンハルトが呼び止めた。 「リリアーナ」 振り返ると、レオンハルトは真剣な表情で言った。 「お前は、もう一人じゃない。私がいる」 その言葉に、リリアーナの心に希望の光が灯った。彼女は深く頭を下げ、部屋を後にした。 廊下を歩きながら、リリアーナは思った。この契約結婚は、もしかしたら運命の出会いだったのかもしれない。 翌朝、リリアーナは貴族会議の準備を進めていた。だが、その時、執事が緊急の知らせを持ってきた。 「リリアーナ様、大変です。教会から、新たな抗議文が届きました」 リリアーナは、その抗議文を受け取った。そこには、彼女が聖女の力を悪用しただけでなく、公爵を呪いにかけたという内容が記されていた。 「これは……私が公爵様に呪いをかけた?」 リリアーナは、その内容に愕然とした。だが、それ以上に恐ろしいのは、その抗議文と同時に、セシリアが送り込んだ刺客が公爵邸に潜入しているという知らせだった。 抗議文と同時に、セシリアが差し向けた刺客がリリアーナの暗殺を企てていることが発覚する。
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