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📖 追放された聖女は隣国で公爵様と契約結婚して幸せになります

追放と契約・心の境界線

1.2K words

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夜明け前の公爵邸は、しんと静まり返っていた。リリアーナは窓辺に立ち、まだ暗い空を見上げていた。昨夜のレオンハルトの言葉が、胸に残っている。「お前は、もう一人じゃない。私がいる」――その言葉は、彼女の心に温かな灯りをともした。だが、同時に、彼に迷惑をかけてはいけないという思いも強くなっていた。 リリアーナは決意を固め、メイドの服に着替えた。髪をまとめ、目立たないように顔を隠す。彼女は、旧市街の古書店で先代公爵の儀式に関する文献を探すつもりだった。レオンハルトの呪いを解く手がかりが見つかるかもしれない。彼のためにも、自分の力で何かを成し遂げたかった。 護衛の目を盗んで、リリアーナは屋敷を抜け出した。裏庭から小道に出て、旧市街へと続く石畳の道を急ぐ。朝もやが立ちこめる街並みは、まだ眠っているようだった。彼女は、自分がこんな大胆な行動を取るとは思ってもみなかったが、もう迷っている時間はなかった。 旧市街に着くと、リリアーナは目的の古書店を探した。路地裏にひっそりと構えたその店は、古びた看板がかかっていた。扉を開けると、かすかに埃の匂いが漂う。店主は年老いた男性で、リリアーナの変装に気づかず、親切に応対してくれた。 「先代公爵の儀式に関する文献はありますか?」 店主は奥の棚を指さした。「あそこに古い記録があります。ただし、ほとんど読まれていませんがね」 リリアーナは礼を言い、棚へと向かった。分厚い本や羊皮紙の束が並んでいる。彼女は手当たり次第にページをめくり、禁忌の儀式の記述を探した。しばらくすると、一冊の古い日誌に目が留まった。そこには、先代公爵が行った儀式の詳細が記されていた。 「これは……!」 リリアーナが夢中で読んでいると、背後に気配を感じた。振り返ると、黒ずくめの男が二人、入り口に立っていた。彼らの目は、リリアーナを捉えて離さない。 「聖女リリアーナ、お命頂戴する」 男たちは短剣を抜き、襲いかかってきた。リリアーナは本を抱えて逃げ出そうとしたが、路地に追い込まれてしまった。壁に背をつけ、男たちに囲まれる。 「なぜ、そこまでして私を狙うの?」 「教会の命令だ。お前が生きている限り、セシリア様の地位が脅かされる」 男が短剣を振り上げた。リリアーナは目を閉じ、身を固くした。その瞬間、鋭い金属音が響き、男の短剣が弾かれた。 「リリアーナ!」 聞き慣れた声に、リリアーナは目を開けた。そこには、レオンハルトが立っていた。彼は剣を手に、刺客たちと対峙している。 「公爵様……どうして?」 「無事か」 レオンハルトは短く言うと、刺客たちに斬りかかった。彼の剣さばきは鋭く、二人の刺客はあっという間に倒された。だが、一人が最後の力を振り絞って、リリアーナに向かって短剣を投げた。 「危ない!」 レオンハルトはリリアーナをかばい、彼女の前に飛び込んだ。短剣は彼の肩に突き刺さった。 「公爵様!」 リリアーナは慌てて駆け寄った。レオンハルトは痛みに顔を歪めながらも、刺客たちが動かないことを確認した。 「大丈夫か?」 「私のことはいいです! あなたが怪我を!」 リリアーナは彼の傷口に手を当てた。すると、かすかに光が宿り、傷がゆっくりと塞がっていく。 「これは……私の力?」 リリアーナは驚いた。封印されていたはずの聖女の力が、少しだけ発動したのだ。レオンハルトも驚きの表情を浮かべた。 「お前、力を使えるのか?」 「はい……でも、ほんの少しだけです」 リリアーナは手を離した。傷は完全に塞がっていた。彼女は自分の手を見つめ、複雑な思いを抱えた。 レオンハルトはリリアーナを連れて、公爵邸に戻った。彼は黙って歩き、リリアーナも何も言えなかった。執務室に着くと、レオンハルトは彼女を椅子に座らせ、自分も向かいの椅子に腰を下ろした。 「なぜ、勝手に屋敷を抜け出した」 その声は、怒りに満ちていた。リリアーナは俯きながら、弁解した。 「公爵様の呪いを解く手がかりを探したかったんです。私の力で、何かできることがあると思って」 「お前の力? 封印されているんだろう?」 「でも、さっき少しだけ……。それに、このまま何もしないでいるのは辛いんです」 リリアーナの声は震えていた。レオンハルトは深くため息をつき、立ち上がると、彼女の前に立った。 「リリアーナ、お前は自分の命を危険にさらしたんだぞ。もし俺が間に合わなければ、どうなっていたか分からない」 「すみません……でも、私は……」 リリアーナが言いかけると、レオンハルトは彼女の肩に手を置いた。 「もう二度と、こんな無謀なことはするな」 その言葉に、リリアーナは涙を浮かべた。彼の心配してくれる気持ちが、嬉しかった。 「はい……ごめんなさい」 レオンハルトは、彼女の涙を見て、少し表情を和らげた。彼はポケットからハンカチを取り出し、リリアーナの涙を拭った。 「お前は、もう一人じゃないんだ。俺がいる。だから、一人で抱え込むな」 リリアーナは、彼の優しさに胸が熱くなった。彼はいつも冷たい態度を取るけれど、本当は誰よりも優しい人なのかもしれない。 「公爵様……ありがとうございます」 リリアーナが微笑むと、レオンハルトはそっと目をそらした。そして、彼女の手を取った。 「お前を失いたくない」 その言葉は、リリアーナの心に深く響いた。彼の真剣な眼差しに、彼女の心臓は高鳴った。 リリアーナは、レオンハルトの言葉に動揺を隠せなかった。彼がそんなことを言うなんて、思ってもみなかったからだ。彼女は、彼の手を握り返したい衝動に駆られたが、ぐっとこらえた。 レオンハルトは「お前を失いたくない」と本音を漏らし、リリアーナは彼の心の内に触れる。
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