翌日の昼過ぎ、診療所の窓から差し込む日差しが、机の上の薬草を照らしていた。リリアとユーリは、昨夜の不審な男の情報を村人から得て、警戒を強めていた。ユーリは窓の外を一瞥し、カーテンを閉めた。
「やはり、あの男は毒を撒いた犯人かもしれない。井戸の水を調べたが、まだ毒が残っている」
ユーリが机の上の試験管を手に取り、中の液体を揺らす。リリアはその横で、薬草の束を手早く刻みながら、不安そうに尋ねた。
「それで、解毒薬は作れるの?」
「ああ、だが、まだ完全ではない。毒の成分が複雑で、時間がかかる」
ユーリはため息をついた。リリアもまた、疲れの色を見せながらも、手を動かし続けた。
「村人たちは、まだ疑っているわ。私たちが来る前は、こんなことなかったって」
リリアの声は沈んでいた。ユーリは彼女の手をそっと握り、励ました。
「気にするな。君は正しいことをしている。信じる者は必ずいる」
その時、窓の外で物音がした。ユーリは即座にリリアを背後に庇い、警戒した。
「誰だ!」
ユーリが叫ぶと同時に、窓ガラスが割れ、鋭いナイフが飛び込んできた。ユーリはリリアを突き飛ばして身を挺し、ナイフが肩に深く突き刺さった。
「ぐっ……!」
ユーリが膝をつく。リリアは悲鳴を上げ、彼の元に駆け寄った。
「ユーリ!しっかりして!」
リリアはユーリの肩から血が流れているのを見て、すぐに回復魔法を使おうとした。しかし、魔力がまだ完全に回復しておらず、手をかざしても光がかすかにしか灯らない。
「くそっ……魔力が足りない」
リリアは焦りながらも、ユーリを診療所の奥のベッドへ運ぼうとした。しかし、ユーリの体重を支えきれず、二人は床に倒れ込んだ。
「リリア……逃げろ……あいつはまだいるかもしれない」
ユーリは息も絶え絶えに言った。リリアは首を振り、彼の肩を押さえた。
「嫌よ!あなたを置いて逃げられない!」
リリアは再び回復魔法を試みたが、手が震え、集中できない。血が止まらず、ユーリの顔色が青ざめていく。
「お願い……どうか……」
リリアは必死に祈りながら、両手をユーリの傷口にかざした。すると、かすかに光が灯り、傷口がゆっくりと塞がり始めた。しかし、リリアの顔から血の気が引いていく。
「リリア……無理をするな……君まで倒れるな」
ユーリはリリアの手を握り、止めようとした。しかし、リリアは首を振り、魔力を注ぎ続けた。
「あなたを助けるまでは……止められない」
リリアの視界がぼやけ始めた。それでも、彼女は手を離さなかった。ユーリの傷が完全に塞がった瞬間、リリアは力尽きて床に倒れた。
「リリア!」
ユーリは痛む肩を押さえながら、リリアを抱き起こした。彼女は意識を失っていたが、呼吸は穏やかだった。ユーリは安堵の息をつき、彼女をそっとベッドに横たえた。
ユーリはリリアの顔を優しく撫でながら、彼女の献身に胸が熱くなった。
「なぜ……そこまでして俺を救うんだ」
ユーリはリリアの手を握り、その温もりを感じた。彼女は自分の命を顧みず、彼を救おうとした。その姿に、ユーリは強く心を動かされた。
「俺が……君を守る」
ユーリはリリアの額にそっとキスを落とした。そして、彼女が目を覚ますのを待つことにした。
数時間後、リリアがゆっくりと目を開けた。視界がぼやける中、ユーリの姿が見えた。
「ユーリ……あなた、無事なの?」
リリアはかすれた声で尋ねた。ユーリは微笑み、頷いた。
「ああ、君のおかげでな。ありがとう、リリア」
リリアは安堵して、涙がこぼれた。
「良かった……本当に良かった」
ユーリはリリアの手を握り、真剣な眼差しで見つめた。
「リリア、君に伝えたいことがある」
リリアは少し戸惑いながらも、ユーリの言葉を待った。ユーリは深呼吸をし、ゆっくりと口を開いた。
ユーリの真剣な表情に、リリアの心臓が高鳴った。彼が何を言おうとしているのか、なんとなく察したが、信じられない気持ちでいっぱいだった。
リリアが昏睡から目覚めると、ユーリが「君を愛している」と告白する。






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