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📖 追放された聖女、呪われた公爵と契約結婚して最幸のスローライフを手に入れる

陰謀の影・心の境界線

1.8K words

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クラウディアの手によって召喚された魔物が、公爵邸の広間に現れた。鋭い牙と赤い目を持つ異形の獣は、リリアとアルフレッドを威嚇するように唸り声を上げる。リリアはアルフレッドの腕を掴み、後ろに下がらせた。 「公爵様、下がっていてください!」 アルフレッドは苦しそうに胸を押さえながらも、首を振った。 「いや、君を一人で戦わせるわけにはいかない」 「でも、あなたは今、呪いで……」 「大丈夫だ。君がさっき抑えてくれたおかげで、少し楽になった」 リリアは唇を噛んだ。確かに、彼の顔色はさっきよりはマシに見える。だが、それでも無理をさせたくない。 「私が時間を稼ぎます。その間に、どうにかして魔物の弱点を見つけてください」 アルフレッドは一瞬迷ったが、リリアの決意のこもった目を見て、頷いた。 「わかった。だが、無理はするなよ」 「はい」 リリアは深呼吸をし、魔物と対峙した。彼女の手のひらに、淡い光が集まる。聖女の力だ。しかし、その光は不安定に揺れている。 魔物が地を蹴って飛びかかってきた。リリアは間一髪で横に跳び、光の刃を放つ。しかし、それは魔物の硬い皮膚に弾かれてしまった。 「くっ……!」 魔物はリリアを狙い、鋭い爪で薙ぎ払う。リリアは転がって避けるが、腕に痛みが走る。かすり傷だが、血が滲んでいる。 「リリア!」 アルフレッドが叫ぶ。彼は剣を抜き、魔物に斬りかかった。しかし、呪いの影響で動きが鈍い。魔物の尾が彼を襲い、背中に直撃した。 「ぐあっ!」 「公爵様!」 リリアは駆け寄り、アルフレッドを守るように立ちはだかった。彼の口元から血が流れている。 「大丈夫ですか?」 「ああ、まだ戦える」 アルフレッドは立ち上がろうとするが、足がふらつく。リリアは彼を支え、魔物を睨んだ。 「もう、あなたを傷つけさせない」 リリアは自分の内側に流れる力を感じた。それは、さっきまで不安定だったのに、今は不思議と落ち着いている。彼女は手をかざし、浄化の光を放った。 「聖なる光よ、穢れを払え!」 光が魔物を包み込む。魔物は苦しそうに咆哮を上げ、体が溶けていくように消えていった。 「やった……!」 しかし、その瞬間、リリアの視界が歪んだ。力を使いすぎたのだ。彼女はその場に崩れ落ちそうになる。 「リリア!」 アルフレッドが彼女を抱き止める。リリアの顔は青白く、呼吸が荒い。 「すみません……力が……」 「もういい、無理をするな」 アルフレッドはリリアを優しく抱きしめた。その腕は震えている。 「君を失うわけにはいかない」 リリアはその言葉に、胸が熱くなるのを感じた。しかし、まだクラウディアがいる。彼女はどこかで見ているはずだ。 「公爵様、まだ……クラウディアが……」 「ああ、わかっている」 アルフレッドはリリアを抱きかかえたまま、広間の奥を見据えた。そこには、クラウディアが立っていた。彼女は魔物が浄化されたのを見て、驚きの表情を浮かべている。 「まさか、あの魔物を倒すとは……さすがは元聖女、といったところかしら」 クラウディアは冷笑を浮かべた。しかし、その目はわずかに警戒している。 「ですが、まだ終わりではありませんわ。あなたたちの力は、もう限界でしょう」 リリアは確かに、立っているのもやっとだった。アルフレッドも、呪いと戦いで消耗している。クラウディアの言う通り、このままでは分が悪い。 だが、リリアは諦めなかった。彼女はアルフレッドの腕の中で、必死に力を振り絞った。 「私は……負けません」 その声はか細いが、決意に満ちていた。クラウディアは一瞬、目を見張った。 「あなたは、なぜそこまでするのですか? 聖女の地位を失い、追放されたというのに」 「地位や名誉のためじゃない。私は、公爵様と領民を守りたいだけです」 リリアはアルフレッドを見上げた。彼もまた、リリアを見つめている。その目には、深い信頼と愛情が宿っていた。 「リリア……」 アルフレッドはリリアをそっと下ろし、クラウディアに向き直った。彼の目は、先ほどまでとは違い、強い光を放っている。 「クラウディア、あなたの企みは暴かれた。これ以上、好き勝手にはさせない」 クラウディアは一歩後退した。彼女の顔には、焦りの色が見え始めている。 「ふん、そんなことを言って、あなたに何ができるというの?」 「何ができるか、見せてやろう」 アルフレッドは剣を構えた。その姿は、呪いに苦しんでいた男とは思えないほど、堂々としている。リリアはその背中を見て、強く思った。 (公爵様は、強い。私は、その隣に立てるように、もっと強くならなくては) クラウディアは手をかざし、再び黒い霧を発生させようとする。しかし、アルフレッドはそれよりも早く、斬りかかった。 「させるか!」 剣がクラウディアの腕をかすめ、彼女は悲鳴を上げた。黒い霧は消え、クラウディアは後ずさる。 「き、貴様……!」 「もう終わりだ。お前の思い通りにはならない」 アルフレッドは剣をクラウディアに向けた。彼女は悔しそうに唇を噛むと、周囲に聖騎士たちが現れた。 「撤退しますわ。ですが、次はこうはいきませんからね」 クラウディアはそう言い残すと、聖騎士たちと共に姿を消した。広間には、リリアとアルフレッドだけが残された。 クラウディアが去った後、アルフレッドは剣を収め、リリアのそばに駆け寄った。 「リリア、大丈夫か?」 「はい、なんとか……」 リリアは立ち上がろうとするが、足に力が入らない。アルフレッドは彼女を支え、壁際のソファに座らせた。 「無理をするな。君はよくやってくれた」 アルフレッドはリリアの手を握った。その手は温かく、リリアは安心して力が抜けるのを感じた。 「公爵様こそ、お怪我は?」 「ああ、かすり傷だ。それよりも、君の方がひどいだろう」 アルフレッドはリリアの腕の傷を見て、眉をひそめた。彼はハンカチを取り出し、優しく血を拭った。 「痛むか?」 「いいえ、大丈夫です」 リリアは首を振った。しかし、アルフレッドの手が触れるたびに、心臓が高鳴る。彼の優しさに触れるのは、これが初めてではない。だが、今はなぜか、特別に感じる。 「リリア、君に伝えたいことがある」 アルフレッドは真剣な表情でリリアを見つめた。リリアはごくりと唾を飲み込む。 「なんでしょうか?」 「君が来てくれてから、私は変わった。君のおかげで、呪いに立ち向かう勇気が持てた。君は、私にとってかけがえのない存在だ」 リリアは目を見開いた。彼の言葉は、契約結婚の当初とは違う、心からのものに聞こえた。 「私もです。公爵様に出会って、初めて自分の居場所を見つけられた気がします」 リリアは微笑んだ。アルフレッドもまた、優しく微笑み返す。 「ありがとう、リリア」 二人の間に、温かい空気が流れた。しかし、その静けさを破るように、リリアの体が急に震え始めた。 「リリア?」 「すみません……少し、疲れてしまって」 リリアの視界がぼやけ始める。力の使いすぎによる反動だ。アルフレッドは彼女を抱き寄せた。 「もう休め。今日はよく頑張った」 リリアはアルフレッドの胸に寄りかかり、目を閉じた。彼の鼓動が聞こえる。安心して、意識が遠くなっていく。 「公爵様……」 「ああ、ここにいる」 アルフレッドはリリアの髪を優しく撫でた。その手つきは、まるで宝物を扱うかのように丁寧だ。リリアはその温もりの中で、静かに眠りに落ちていった。 リリアが眠りに落ちた後、アルフレッドは彼女をそっとソファに横たえた。そして、立ち上がり、広間の入り口を見つめた。そこには、クラウディアが立っていた。彼女はまだ去っていなかったのだ。 「よくもまあ、のんきに寝ていられるものだわ」 クラウディアは嘲るように言った。アルフレッドは彼女を睨みつける。 「リリアに手を出すな」 アルフレッドの声は低く、怒りを込めていた。クラウディアは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに笑みを浮かべた。 「まあ、怖い。ですが、あなたに何ができるというの?」 「やってみるか?」 アルフレッドは剣に手を置いた。クラウディアは一歩後退した。 「ふん、今日のところは退いてやるわ。ですが、次はこうはいかない」 クラウディアはそう言い残すと、今度こそ姿を消した。アルフレッドはリリアのそばに戻り、彼女の寝顔を見つめた。 「守ってみせる。必ず」 彼はそう呟き、リリアの手を握った。 リリアが倒れる中、公爵はクラウディアに「彼女に手を出すな」と宣言する。
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