📖 【追放された聖女、隣国の公爵に買われる ~穢れを祓う力で、幸せな結婚生活を掴みます~】
契約と試練・公然の挑戦
馬を駆るエリアスの背中を追いながら、リリアーナは先ほどの手紙の暗号を思い返していた。『北の鉱山』という言葉が頭から離れない。セシリアが何を企んでいるのか、想像するだけで背筋が寒くなる。
街道を外れ、森の中の小道に入ると、エリアスが突然手綱を止めた。
「待て、リリアーナ。あれを見ろ」
彼が指さす先、木々の隙間から黒い煙が立ち上っている。方向はまさに北の鉱山だ。
「まさか、もう襲撃が…!」
リリアーナの声が震える。エリアスは鋭い目つきで煙を見つめながら、馬を進めた。
「急ぐぞ。間に合うかもしれない」
二人は馬を飛ばし、鉱山の入口へと駆けつけた。そこには、倒れた鉱夫たちと、異形の影が蠢いていた。
鉱山の入口には、黒い靄のような使い魔が数体、うごめいていた。鉱夫たちは地面に倒れ、苦しそうにうめいている。リリアーナはすぐに聖女の力を解放しようとしたが、エリアスが制した。
「待て、無闇に力を使うな。あれは聖女の力を吸収するタイプかもしれない」
エリアスの警告を聞き、リリアーナは手を止めた。しかし、このままでは鉱夫たちが危険だ。彼女は周囲を見渡し、鉱山の入口に置かれた聖水の樽に目を留めた。
「聖水を使えば、弱体化させられるかもしれない」
リリアーナは樽に駆け寄り、手に聖水を汲んだ。使い魔が彼女に襲いかかるが、エリアスが剣で迎撃する。
「リリアーナ、今だ!」
彼の合図で、リリアーナは聖水を使魔に向かって投げつけた。聖水がかかった使い魔は、苦しそうにのたうち回る。しかし、その隙に別の使い魔がリリアーナに飛びかかり、彼女の腕に噛みついた。
「ぐっ…!」
瞬間、リリアーナは自分の力が吸い取られる感覚を覚えた。体が急に重くなり、視界が揺らぐ。
「リリアーナ!」
エリアスが使い魔を斬り捨て、彼女を抱き寄せる。しかし、リリアーナは立っているのがやっとだった。
「大丈夫…まだ戦える…」
彼女は無理に笑おうとしたが、体が言うことを聞かない。エリアスは彼女を背に庇いながら、残りの使い魔と対峙した。
「もう十分だ。お前は下がっていろ」
エリアスの声は厳しかったが、その目には心配の色が浮かんでいた。リリアーナは悔しさに唇を噛んだ。自分の力が通用しない相手に、無力さを痛感する。
しかし、彼女は諦めなかった。鉱夫たちがまだ倒れている。彼らを救わなければ。リリアーナは這うようにして、聖水の樽に近づいた。
リリアーナは聖水の樽にたどり着くと、両手で水をすくい、周囲に撒いた。聖水が地面に染み込むと、使い魔たちは悲鳴を上げて後退した。
「よくやった!」
エリアスはその隙に、残りの使い魔を次々と斬り捨てた。やがて、静寂が戻り、鉱夫たちがゆっくりと体を起こし始めた。
「助かった…ありがとうございます」
鉱夫たちがリリアーナに頭を下げる。彼女はふらつきながらも、微笑みを返した。
「皆さんが無事でよかった」
エリアスが彼女の肩を支え、優しく声をかけた。
「無理をするな。よくやった」
その言葉に、リリアーナの胸が温かくなる。彼に認められたことが、何よりもうれしかった。
「公爵閣下のおかげです」
リリアーナが言うと、エリアスは首を振った。
「いや、お前の機転がなければ、鉱夫たちは助からなかった。お前は誇りに思うべきだ」
その言葉に、リリアーナは目を潤ませた。彼の信頼が、自分の力になっていることを感じる。
「ありがとうございます」
彼女が小さくつぶやくと、エリアスは彼女を馬に乗せ、自分も後ろに跨った。
「領地に戻るぞ。しっかり休め」
馬が歩き出すと、リリアーナはエリアスの背中に寄りかかった。安心感に包まれ、彼女の意識は次第に遠のいていった。
領地に戻った後、リリアーナはベッドで休んでいたが、エリアスは執務室で一人、考え込んでいた。彼女の消耗は思った以上に深刻だ。このままでは、次の攻撃に耐えられないかもしれない。
エリアスは机の引き出しから、一通の手紙を取り出した。それは、セシリアからの挑戦状だった。彼は決意を固め、手紙を握りしめた。
公爵は「このままではリリアーナの力が持たない」と焦り、セシリアとの直接対決を決意する。






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