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📖 【追放された聖女、隣国の公爵に買われる ~穢れを祓う力で、幸せな結婚生活を掴みます~】

追放と出会い・代償

1.3K words

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馬車の揺れが、鎖の擦れる音を立てる。リリアーナの手首には冷たい鉄の枷が嵌められ、粗い麻の服は汗と埃で汚れていた。窓の外には見知らぬ景色が広がり、夕日が赤く沈んでいく。数時間前まで、彼女は聖女として神殿で祈りを捧げていた。だが、今はただの奴隷だ。 「まさか、聖女様がこんな姿になるとはな」 隣に座る奴隷商が、嘲笑を込めて言った。彼の目は値踏みするようにリリアーナを見る。 「教会のお墨付きだ。力が衰えたと見なされたら、こうなる運命だ」 リリアーナは唇を噛んだ。冤罪だ。セシリアが仕組んだ罠。だが、それを証明する術はない。神殿はセシリアの言葉を信じ、リリアーナの聖女の力を剥奪した。そして、彼女は奴隷商に売られた。 「だが、お前は運がいい。買い手がいるらしい。ヴェルンハルト公爵家だ」 公爵家。隣国の名門で、領地経営に手腕を持つことで知られている。だが、なぜ奴隷を買うのか。リリアーナにはわからなかった。 馬車がゆっくりと止まる。奴隷商が外に出て、誰かと話す声が聞こえた。リリアーナは窓から外を見た。そこには、簡素な馬車が一台停まっている。護衛らしき男たちが数人。そして、一人の男性が立っていた。 彼は背が高く、銀色の髪を後ろに撫でつけていた。鋭い青い瞳が、馬車の中を射抜くように見つめる。公爵エリアス・ヴェルンハルト。彼の存在感に、リリアーナは息を呑んだ。 奴隷商がリリアーナを馬車から降ろす。彼女の足元がふらつき、鎖がじゃらりと鳴った。エリアスは無表情で彼女を見下ろす。 「これが聖女か。随分と痩せているな」 「公爵閣下、ご覧の通り、まだ若く、働き手としては十分かと。何せ、元聖女ですから、祈りもできるでしょう」 奴隷商は愛想笑いを浮かべる。エリアスはリリアーナの腕を掴み、手首の枷を確認した。 「力は使えるのか?」 その問いに、リリアーナははっとした。今がチャンスだ。彼女は奴隷の身から解放されるために、自らの価値を示さなければならない。 「はい。私は穢れを祓う力があります。神殿で認められた聖女の力です」 エリアスの眉がわずかに動く。 「だが、教会はお前の力を否定したと聞いたが」 「それは冤罪です。私はセシリアに嵌められたのです。私の力は本物です。証明できます」 リリアーナは必死に訴えた。エリアスはしばらく彼女を見つめていたが、やがて口を開いた。 「証明してみせろ。もし偽りなら、お前はただの奴隷として領地で働いてもらう。もし本当なら、買い取ってやる」 リリアーナは頷き、手枷を外してもらうよう求めた。エリアスは護衛に命じて枷を外させる。自由になった手で、彼女は地面に手をかざした。 「我が祈り、穢れを祓え」 彼女の手のひらから淡い光が溢れ、地面に広がった。すると、土の中から黒い靄のようなものが浮かび上がり、光に触れて消えていった。それは確かに、穢れを浄化する力だった。 エリアスの目がわずかに見開かれる。だが、彼はすぐに表情を戻した。 「確かに力はあるようだ。だが、教会がお前を追放した理由はそれだけではないだろう。何か隠しているな」 リリアーナは唇を噛んだ。確かに、彼女の力には代償がある。使いすぎると、体に激しい痛みが走る。それは教会でも知られていたが、セシリアはそれを利用して彼女を貶めたのだ。 「代償があります。力を使うと、体に負担がかかります。ですが、それでも私はこの力で人を救いたい」 エリアスはしばらく沈黙した。彼の視線は鋭く、リリアーナの心を見透かすようだった。 「お前の力、確かに本物だ。買い取ろう。ただし、お前は私の領地で働くことになる。私の命令に従え」 リリアーナはほっと息をついた。奴隷の身から解放される。だが、同時に新たな不安が生まれた。この公爵は何を考えているのか。彼の目的は何なのか。 エリアスは護衛に金を渡し、奴隷商を追い払った。リリアーナは解放され、公爵の馬車に乗せられた。中は簡素だが、清潔で、奴隷商の馬車とは比べ物にならなかった。 「まずは領地に向かう。そこでお前の力を試す」 エリアスはそう言って、向かいの席に座った。リリアーナは緊張しながらも、彼に尋ねた。 「公爵閣下は、なぜ私を買ったのですか? 教会と対立するリスクを冒してまで」 エリアスは窓の外を見つめたまま、静かに答えた。 「私の領地には、呪いが蔓延っている。それを解く力を持つ者を探していた。お前の力は、そのために使えるかもしれない」 呪い。リリアーナはその言葉に心がざわついた。聖女の力は穢れを祓うことができるが、呪いはより複雑だ。だが、彼の領地に何か問題があるのなら、自分の力が役立つかもしれない。 「お前には、聖女としての過去がある。だが、今は私の所有物だ。その自覚を持て」 エリアスの言葉は冷たかったが、リリアーナはかえって安心した。彼は打算的で、感情に流されない。それが信頼を築く第一歩になるかもしれない。 馬車が動き出す。リリアーナは窓の外を見た。夕日が沈み、空が暗くなっていく。だが、彼女の心には小さな希望が灯っていた。ここでなら、自分の力で生きていけるかもしれない。 「お前の名前は?」 「リリアーナです」 「リリアーナ。覚えておく」 エリアスはそう言って、目を閉じた。リリアーナは彼の横顔を盗み見た。彼は冷徹な貴族だと噂されていたが、どこか哀しみを帯びた表情をしていた。 馬車はしばらく進み、公爵領の入り口に差し掛かった。エリアスは目を開け、リリアーナを見た。 公爵はリリアーナに「お前の力を試させてもらう」と告げ、領地へ連れて行く。
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