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📖 【追放された聖女、隣国の公爵に買われる ~穢れを祓う力で、幸せな結婚生活を掴みます~】

追放と出会い・新たな計画

1.5K words

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馬車が公爵領の門をくぐると、リリアーナは窓の外に広がる景色に息を呑んだ。荒れ果てた畑、枯れた木々、そして異様に淀んだ空気。領地全体が、見えない靄に覆われているようだった。 「これが、公爵領の現状か」 エリアスは無言で頷いた。彼の表情は硬く、その瞳には深い疲労の色が滲んでいた。 「呪いの影響だ。作物は育たず、人々は病に倒れる。このままでは、領地は滅びる」 リリアーナは窓に手を当てた。確かに、ここには強い穢れが漂っている。聖女としての感性が、危険信号を発していた。 「私の力で、何かできるかもしれません」 エリアスは一瞥しただけで、何も言わなかった。馬車はやがて、石造りの立派な屋敷の前に停まった。ヴェルンハルト公爵邸。その重厚な扉が開かれ、リリアーナは中に招き入れられた。 書斎に通されたリリアーナは、エリアスと向かい合って座った。机の上には、領地の地図と報告書が広げられている。 「まずは、お前の力を確かめる。東の村で、深刻な穢れが発生している。そこを浄化してもらう」 エリアスは淡々と告げた。リリアーナは緊張で喉が渇いたが、それでも決意を固めて頷いた。 「承知しました」 だが、その時だった。書斎の扉がノックもなく開かれ、年配の男性が入ってきた。彼はエリアスの側近、ハンスだった。 「公爵閣下、その者を信用なさるのですか? 教会に追放された聖女ですぞ。何か裏があるやもしれません」 ハンスはリリアーナを睨みつけた。その目には、明確な敵意が宿っていた。 リリアーナはハンスの言葉に、心臓が凍りつくのを感じた。だが、ここで怯んでいては、何も始まらない。彼女はまっすぐにハンスを見返した。 「私は、教会に追放されました。ですが、私の力は本物です。証明してみせます」 「証明? どうやってだ? お前のような若造に、何ができる」 ハンスは嘲るように笑った。エリアスは黙って成り行きを見守っている。リリアーナは、自分が試されていることを悟った。 「今、この場で、この書斎の穢れを祓ってみせます」 リリアーナは立ち上がり、部屋の中央に移動した。彼女は深く息を吸い込み、手をかざした。 「我が祈り、穢れを祓え」 彼女の手のひらから淡い光が溢れ、部屋全体に広がった。すると、床や壁から黒い靄が浮かび上がり、光に触れて消えていった。数秒後、部屋の空気が清らかになった。 ハンスは驚きの表情を浮かべたが、それでも納得しない。 「こんなもの、簡単な手品かもしれない。もっと深刻な場所で試してみろ」 「ならば、東の村に連れて行ってください。そこで、本物の穢れを祓ってみせます」 リリアーナは強く言い切った。エリアスはようやく口を開いた。 「ハンス、彼女を信じてみよう。もし偽りがあれば、その時は追い出せばいい」 ハンスは不満そうだったが、公爵の命令には逆らえなかった。彼は一礼して、書斎を出て行った。 部屋に二人だけになると、エリアスはリリアーナを見つめた。 「お前は、なぜそこまでする? 追放された身だろう」 「私は、自分の力で人を救いたい。それだけです。たとえ、教会に見放されても」 リリアーナの言葉に、エリアスは何かを考えるように沈黙した。しばらくして、彼は口を開いた。 「お前を信じる。だが、それには条件がある」 「条件、ですか?」 「私と契約結婚をしてほしい」 リリアーナは驚きのあまり、言葉を失った。契約結婚? なぜ、公爵がそんなことを? 「私の領地には、呪いを解くために聖女の力が必要だ。だが、お前がただの使用人では、家臣たちも納得しない。公爵夫人という立場なら、お前の力も正式に認められる」 エリアスの説明は理にかなっていた。だが、リリアーナには、彼の真意が読めなかった。 「私を信じてくださるのですか?」 リリアーナは尋ねた。エリアスは少しだけ目を細め、答えた。 「信じるかどうかは、お前の行動次第だ。だが、私はお前の力を必要としている。それだけは確かだ」 リリアーナは、エリアスの言葉に、複雑な感情が渦巻くのを感じた。彼は冷徹な貴族だと思っていたが、その目には、領地を思う真剣さがあった。 「わかりました。契約結婚、お受けします」 リリアーナはそう答えた。エリアスは少し驚いたようだったが、すぐに表情を戻した。 「決まりだ。明日、婚姻の手続きを行う。それまでに、お前の身の回りのものを整えておけ」 エリアスはそう言って、書類をまとめ始めた。リリアーナは、彼の横顔を盗み見た。この人が、私の夫になるのか。まだ実感はないが、不思議と不安はなかった。 「公爵閣下、一つお聞きしてもよろしいですか?」 「何だ」 「なぜ、私を買ったのですか? 本当に、呪いを解くためだけですか?」 エリアスは手を止め、リリアーナを見た。その目は、少しだけ優しかった。 「それだけだ。だが、お前が教会で受けた不当な扱いについては、いずれ聞かせてもらう。今は、まず領地のことを考えよう」 リリアーナは頷いた。彼は、自分の過去を詮索しない。それが、かえって心地よかった。 「では、明日からよろしくお願いします。公爵閣下」 「ああ。こちらこそ、よろしく頼む」 二人の間に、初めて穏やかな空気が流れた。リリアーナは、この場所でなら、自分の力で生きていけるかもしれないと、心から思えた。 翌日、婚姻の手続きは滞りなく行われた。リリアーナは、公爵夫人として、正式にヴェルンハルト家の一員となった。ハンスはまだ不満そうだったが、エリアスの決定には従わざるを得なかった。 「では、早速だが、東の村に向かうぞ」 エリアスはそう言って、馬車を用意させた。リリアーナは、新しいドレスに身を包み、彼の隣に座った。馬車が動き出すと、彼女は窓の外を見た。荒れ果てた土地が続いている。 「この呪いを、必ず解いてみせます」 リリアーナは心の中で誓った。 馬車はしばらく進み、東の村の入り口に差し掛かった。村は、異様な静けさに包まれていた。家々の窓は閉ざされ、人影はほとんどない。 「ここが、東の村だ。この村の中心部に、強い穢れがある」 エリアスは馬車を降り、リリアーナを案内した。リリアーナは、地面に手をかざした。確かに、強い穢れを感じる。だが、それだけではない。何か、もっと深いものが潜んでいるような気がした。 「公爵閣下、この穢れは、普通のものではありません。何か、呪術的なものが混ざっています」 リリアーナはそう言った。エリアスは眉をひそめた。 「呪術だと? まさか、誰かが仕掛けたのか」 「はい。おそらく、この村を狙った、意図的なものです」 リリアーナの言葉に、エリアスの表情が険しくなった。だが、彼はすぐに決断を下した。 「ならば、お前の力で、その呪いを祓えるか?」 公爵はリリアーナに「まずは東の村の穢れを祓ってほしい」と最初の任務を与える。
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