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📖 【追放された聖女、隣国の公爵に買われる ~穢れを祓う力で、幸せな結婚生活を掴みます~】

追放と出会い・公然の挑戦

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公爵邸に戻ると、重苦しい空気が漂っていた。大広間には、家臣たちがずらりと並び、リリアーナを値踏みするような視線を向けている。先ほどの井戸での出来事が、すでに彼らの耳に入っているのだろう。エリアスが先頭を歩き、リリアーナはその後ろに続いた。 「おかえりなさいませ、公爵閣下」 執事が深々と頭を下げる。だが、その隣に立つ老臣は、リリアーナを睨みつけて言った。 「閣下、その者を連れて戻られたのですか。教会から追放された偽聖女など、この屋敷に置く価値もありませんぞ」 リリアーナは唇を噛んだ。だが、エリアスは涼しい顔で応じる。 「彼女は私が選んだ聖女だ。文句があるなら、私に申し出よ」 その言葉に、家臣たちの間にざわめきが広がる。リリアーナは、エリアスの背中を見つめた。彼は、自分のために立ちはだかってくれている。だが、それだけでは収まらないだろう。家臣たちの目は、まだ敵意に満ちていた。 「公爵閣下、お言葉ですが、その者は教会の儀式も満足にできないと聞き及んでおります。このような者に、領地の穢れを祓えるはずがありません」 先ほどの老臣が一歩前に進み出た。名はガルド、公爵家に長年仕える重臣だ。彼はリリアーナを射抜くように見つめ、続けた。 「ならば、我々がその力を確かめてやろう。決闘だ。私と勝負し、その力を見せよ」 周囲の家臣たちが息を呑む。決闘は、貴族の間で名誉をかけて行われるもの。リリアーナは、聖女としての立場を賭けて挑まれたのだ。 しかし、リリアーナは静かに首を振った。 「私は、その申し出をお受けできません」 「何? 臆したか?」 ガルドが嘲るように笑う。だが、リリアーナは凛とした声で言い放った。 「私の力は、戦うためにあるのではありません。癒すためにあるのです。決闘で血を流すことは、聖女の本懐に反します」 その言葉に、大広間が静まり返った。ガルドは一瞬言葉を失ったが、すぐに怒りをあらわにする。 「聖女の本懐? 笑わせる。お前は教会から追放された身だろう。その口上、偽りに聞こえるぞ」 リリアーナは、それでも動じなかった。 「私は、教会に仕えていた時も、今も、人を癒すことに変わりはありません。決闘で力を示すよりも、実際に領民を救うことで証明いたします」 ガルドは鼻で笑ったが、その目にはわずかに困惑の色が浮かんでいた。他の家臣たちも、リリアーナの言葉に揺れているようだ。だが、ガルドは引き下がらない。 「ならば、証明してみせよ。この場で、誰かを癒してみろ。できなければ、お前は偽物だ」 リリアーナは、周囲を見渡した。家臣たちは皆、冷たい目をしている。だが、その中に一人、腕を押さえた若い騎士がいた。彼は先日の訓練で怪我をしたらしい。リリアーナは、その騎士に近づいた。 「お怪我をされていますね。よろしければ、お見せいただけますか?」 騎士は戸惑いながらも、腕の包帯を解いた。そこには、まだ生々しい傷があった。リリアーナは手をかざし、祈りを捧げる。すると、淡い光が傷を包み込み、みるみるうちに塞がっていく。 「痛みは引きましたか?」 リリアーナが尋ねると、騎士は驚いたように頷いた。 「あ、ああ……治った。ありがとうございます」 その光景に、家臣たちがざわめいた。ガルドも、信じられないといった表情でリリアーナを見つめている。だが、彼はまだ認めようとしない。 「た、たまたまだ。あんなもの、まやかしに過ぎない」 リリアーナは、ガルドに向き直った。 「私は、決闘で力を示すつもりはありません。ですが、このようにして、一人でも多くの人を癒すことが、私の使命です。どうか、理解してください」 その言葉に、ガルドは押し黙った。だが、彼の背後にいた別の家臣が声を上げる。 「そんな甘い言葉で誤魔化せると思うな。お前は、教会の封印を解くこともできなかったではないか」 リリアーナは、その言葉に心を突かれた。確かに、彼女の力では封印を解けなかった。だが、それでも彼女は諦めていなかった。 「確かに、私はまだ封印を解くことはできません。ですが、その原因を突き止めることはできました。これは、教会の関与を示す証拠です」 リリアーナは、エリアスが持っているはずの欠片を思い出した。だが、彼女はそれを自分で提示することはできなかった。エリアスが持っているからだ。 「証拠? そんなもの、捏造に決まっている」 家臣たちが嘲笑う。リリアーナは唇を噛んだ。彼らは、自分を認めようとしない。だが、彼女は屈しなかった。 「私は、この目で見たものを信じます。そして、公爵閣下も同じです。どうか、私たちの調査を信じてください」 その言葉に、家臣たちは一瞬静かになった。だが、ガルドはなおも食い下がる。 「公爵閣下がお認めになっても、我々は認めませんぞ。このままでは、公爵家の結束が揺らぎかねません」 その言葉に、エリアスがついに口を開いた。 「彼女は私が選んだ聖女だ。不服ならば私に申し出よ」 エリアスの声は、大広間に響き渡った。その目は、家臣たちを一人ずつ見据えている。ガルドは、その迫力に押され、一歩後退した。 「ですが、公爵閣下……」 「何か問題があるか? 彼女は、先ほども村で穢れを祓い、井戸の封印を発見した。その功績は、お前たちも知っているだろう」 エリアスは、リリアーナの隣に立ち、彼女の肩に手を置いた。その仕草は、彼女を守るという意志の表れだった。リリアーナは、その温かさに胸が高鳴った。 「私は、彼女を信じる。そして、彼女と共にこの領地を守っていく。異論がある者は、今すぐ出て行け」 その言葉に、家臣たちは沈黙した。ガルドも、これ以上は言えず、悔しそうに拳を握った。だが、その目には、わずかにリリアーナへの評価が変わったような光があった。 「……わかりました。公爵閣下のお言葉に従いましょう」 ガルドはそう言って、頭を下げた。他の家臣たちも、それに続く。リリアーナは、ほっと息をついた。だが、それだけでは終わらない。 「ただし、その聖女が本当に力を持っているか、我々も見届けさせていただきます」 ガルドは、リリアーナを見つめて言った。リリアーナは、その言葉に力強く頷いた。 「はい。必ず、お見せいたします」 そのやり取りを見ていたエリアスは、リリアーナに微笑みかけた。その笑顔に、リリアーナは心が温かくなった。彼は、自分のことを信じてくれている。それが、何よりもうれしかった。 「よくやった」 エリアスは、リリアーナにだけ聞こえる声で言った。リリアーナは、頬を赤らめてうつむいた。二人の間には、確かな絆が生まれていた。 家臣たちが引き下がったことで、大広間には静けさが戻った。だが、エリアスはまだ家臣たちを見渡していた。その目は、冷たく鋭い。リリアーナは、彼が何かを言おうとしているのを感じた。 公爵が家臣たちを睥睨しながら宣言する。
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