公爵から三日間の猶予を宣告された直後、リリアーナは公爵邸の書庫に籠り、封印を解く手がかりを探し始めた。夜明け前の冷たい空気が、石造りの部屋に満ちている。机の上には、教会の封印の写しと、東の村の地図、そして欠片が並んでいた。
リリアーナは、公爵の許可を得て書庫の古い文献を調べ始めた。彼女の指は、羊皮紙のページをめくるたびに震えた。教会の封印は、単なる紋様ではなく、聖女の真の力によってのみ解けるという。しかし、その力は「強い感情」によって引き出されるという記述が、ある古文書に記されていた。
「感情……?」
リリアーナは、その言葉に戸惑いを覚えた。彼女は幼い頃に家族を疫病で失い、その悲しみを乗り越えるために感情を押し殺してきた。教会でも、聖女としての力は「感情を抑えることで安定する」と教えられていた。しかし、この文献は逆のことを示している。
「感情を解放することで、力が強くなる……?」
彼女は、その記述を何度も読み返した。しかし、感情を解放することは、彼女のトラウマと向き合うことを意味する。家族を失った悲しみ、教会に追放された悔しさ、そして公爵への感謝と信頼。それらをすべて感じることは、あまりにも苦しい。
リリアーナは、文献を閉じて、深く息を吐いた。彼女の目には涙が浮かんでいた。しかし、彼女は涙を拭い、再び文献を開いた。
「やるしかない。この力で、公爵の信頼に応えたい」
彼女は、感情を解放する方法を模索し始めた。まずは、自分が何を感じているのかを認めることから始めようと思った。彼女は、机の上に置かれた封印の欠片を手に取り、その冷たい感触を確かめた。
「私は、ここにいたい。この場所で、公爵のために働きたい」
その思いを口にした瞬間、彼女の手の中で欠片が微かに光った。リリアーナは、はっとした。しかし、光はすぐに消えてしまった。
「まだ、足りない……?」
彼女は、もっと深く感情を掘り下げる必要があると感じた。しかし、それは彼女の心の傷をえぐるような行為でもあった。彼女は、恐怖と戦いながら、自分自身と向き合い始めた。
リリアーナは、書庫で何時間も過ごした。彼女は、感情を解放するために、幼い頃の記憶を辿った。家族と過ごした温かい日々、疫病で彼らを失った悲しみ、教会で孤独に耐えた日々。それらの記憶は、彼女の心に深い痛みをもたらしたが、同時に、彼女の内に眠る力を呼び覚まそうとしていた。
やがて、彼女は一つの確信に至った。
「私は、公爵のために力を取り戻したい。この居場所を守りたい」
その強い思いが、彼女の感情を解放した。彼女の体が、淡い光に包まれた。それは、聖女の力の輝きだった。
リリアーナは、その光を感じながら、公爵のもとへ向かった。彼女は、エリアスの前に立ち、まっすぐな目で宣言した。
「公爵閣下、私、やってみせます」
エリアスは、その言葉に少し驚いた様子だったが、すぐに微笑みを浮かべた。
「ああ、信じている」
その言葉に、リリアーナの心は温かくなった。彼女は、この人のために力を尽くしたいと強く思った。
「東の村の廃教会に、封印の手がかりがあるはずです。そこへ向かいたいのです」
エリアスは、頷いた。
「許可する。ただし、護衛をつける。何かあってはならないからな」
リリアーナは、感謝の気持ちを込めて頭を下げた。彼女は、自分の力で潔白を証明する決意を固めた。
リリアーナは、書庫を後にする準備を始めた。彼女は、地図と欠片を革袋にしまい、護衛とともに東の村へ向かう計画を立てた。
リリアーナは決意の表情で書庫を後にする。






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