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📖 【追放された聖女、隣国の公爵に買われる ~穢れを祓う力で、幸せな結婚生活を掴みます~】

追放と出会い・決戦前夜

1.6K words

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馬の蹄の音が、リリアーナの意識に響いていた。体は重く、まるで水底に沈んでいるようだ。まぶたを開けようとしても、光がまぶしくて目がくらむ。 「リリアーナ、しっかりしろ」 エリアスの声が聞こえる。彼の腕が、彼女をしっかりと支えていた。馬は街道を疾走し、公爵邸へと向かっている。リリアーナは、自分の体がひどく熱いことに気づいた。さっきの戦いで、力を使いすぎたのだ。 「公爵閣下……すみません……」 かすれた声で謝罪すると、エリアスは「無理をするな」と優しく言った。彼の胸に顔を埋めると、温かさと安堵が広がる。しかし、意識は再び闇に沈んでいった。 次に目を覚ましたとき、そこは見覚えのある天蓋付きのベッドだった。公爵邸の寝室だ。体はまだだるいが、熱は下がっているようだ。枕元には、エリアスが椅子に座り、うつむいていた。彼の顔には疲れの色が濃く、何日も眠っていないように見える。 「公爵閣下……」 声をかけると、エリアスははっと顔を上げた。その目には、安堵の色が浮かぶ。 「リリアーナ、目が覚めたか。良かった」 彼は立ち上がり、ベッドの縁に手をかけた。リリアーナは、自分の状態を確かめるように、手を握ったり開いたりした。力はまだ戻りきっていないが、動くことはできる。 「私は、どのくらい眠っていたのですか?」 「三日だ。医師団が君を診て、安静が必要だと言っていた」 エリアスの声は、かすかに震えていた。リリアーナは、彼が心配してくれていたのだと知り、胸が熱くなった。 そのとき、寝室のドアがノックされ、執事が入ってきた。 「公爵閣下、教会の使者が参っております。リリアーナ様の身柄引き渡しを要求しております」 エリアスの表情が、一瞬で険しくなった。 「追い返せ」 「しかし、何度も参っておりまして……」 「何度でも追い返せ。私はリリアーナを渡す気はない」 エリアスの声には、強い意志が込められていた。リリアーナは、彼が自分のために教会と対立していることを知り、申し訳なさと感謝の気持ちでいっぱいになった。 「公爵閣下、私が話をします」 リリアーナが起き上がろうとすると、エリアスは手を伸ばして止めた。 「いや、君は休んでいてくれ。私が何とかする」 しかし、リリアーナは首を振った。 「いいえ、私が行きます。私のことは私が守ります」 彼女の目は真剣だった。エリアスはため息をつき、渋々ながらも彼女を伴って応接間へ向かうことにした。 応接間には、教会の使者が立っていた。白い法衣をまとった男は、リリアーナを見ると、嫌悪の表情を浮かべた。 「お久しぶりです、リリアーナ。教会を追放された身でありながら、公爵閣下に迷惑をかけているようだな」 「私は迷惑をかけていません。私はここで、公爵閣下のために働いています」 リリアーナは毅然と言い返した。しかし、使者は鼻で笑った。 「聖女の力も失ったお前が、何ができるというのだ。素直に教会に戻り、罪を償うべきだ」 「私は戻りません」 リリアーナの言葉に、使者の顔色が変わった。 「ならば、公爵閣下にも相応の報いを受けてもらうことになる。教会は、公爵家への支援を打ち切るだろう」 エリアスは、使者の脅しに微動だにしなかった。 「支援など、必要ない。私は自分の力で領地を守る」 エリアスの言葉に、使者は悔しそうな表情を浮かべた。しかし、彼は懐から一通の書状を取り出した。 「これは、教会からの最後通告です。リリアーナを引き渡さないならば、公爵家を敵とみなすと」 リリアーナは、その書状を見て、唇を噛んだ。彼女のせいで、公爵家に迷惑がかかっている。彼女は、自分がここにいることで、エリアスに危険を及ぼしていることを痛感した。 「公爵閣下、私が……」 しかし、エリアスは彼女の言葉を遮った。 「リリアーナ、君は何も言わなくていい。私は君を守ると決めた」 エリアスは使者に向き直り、鋭い目で言い放った。 「伝えろ。私はリリアーナを渡さない。もし教会が手を出すならば、公爵家の総力をもって対抗する」 使者は、その迫力に押され、一歩後退した。しかし、彼は最後にこう言い残して去っていった。 「後悔することになるぞ」 その言葉が、部屋に重く響いた。 使者が去った後、リリアーナはエリアスの顔を見上げた。彼の目は、強い決意に満ちていた。 「公爵閣下、私のために、そこまでしていただいて……」 リリアーナの声は、涙で潤んでいた。エリアスは、彼女の肩に手を置き、優しく言った。 「君は私の妻だ。守るのは当然だ」 その言葉に、リリアーナの心は温かくなった。しかし、同時に、自分が彼に負担をかけていることを申し訳なく思った。 「でも、私はまだ、あなたの役に立てていません。封印も解けていないのに」 リリアーナはうつむいた。エリアスは、彼女の顎に手を添えて、顔を上げさせた。 「君は十分に役に立っている。あの戦いで、君は敵を退けた。それだけでも、私は君を買った価値があったと思っている」 エリアスの言葉に、リリアーナは驚いた。彼は、自分の力を評価してくれているのだ。 「でも、私はもっと強くなりたいです。あなたの領地を救うために」 リリアーナの目は、強い意志を宿していた。エリアスは、その目を見つめ、微笑んだ。 「ならば、その決意を信じよう。だが、無理はするな。私は君に長く生きてほしい」 その言葉に、リリアーナの心は大きく動いた。彼は、自分のことを大切に思ってくれている。 「はい、公爵閣下」 リリアーナは、エリアスの胸に手を当てた。彼の心臓の鼓動が、伝わってくる。彼女は、この人のために生きたいと強く思った。 そのとき、リリアーナの頭の中で、記憶の断片がよみがえった。幼い頃、森で怪我をした少年を助けた記憶。その少年の顔が、エリアスと重なる。 「あの日、森で……」 リリアーナは、思わずつぶやいた。エリアスは、その言葉に反応した。 「森? どうした?」 「いえ、何でもありません。少し、昔のことを思い出して」 リリアーナは、その記憶を確かめるように、目を閉じた。彼女は、自分の力の本質を理解し始めていた。 「私は、誰かを救うために力を授かった。その力で、あなたを救いたい」 リリアーナは、エリアスの手を握り、強く言った。 「公爵閣下、私、封印を解きます」 エリアスは、その言葉に驚いた。しかし、彼女の目は真剣だった。 「本当にできるのか?」 「はい。私の力の本質を理解しました。私は、この力で、あなたの領地を救います」 リリアーナの声には、迷いがなかった。エリアスは、彼女の決意を感じ取り、頷いた。 「分かった。だが、無理はするな。私も共にいる」 その言葉に、リリアーナは微笑んだ。彼女は、エリアスの手を握り返した。 「ありがとうございます、公爵閣下」 二人の間に、強い絆が生まれていた。 そのとき、応接間のドアが再びノックされ、執事が慌てた様子で入ってきた。 「公爵閣下、教会の使者が再び参りました。今度は、兵を連れております」 エリアスは、眉をひそめた。リリアーナは、彼の顔を見つめ、決意を新たにした。 リリアーナが宣言した直後、教会の使者が再び抗議の声を上げるが、公爵が一喝して退ける。
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