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📖 捨てられた聖女は冷徹公爵の契約婚約者となり、偽りの恋で王国を救う

辺境の試練・心の境界線

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「セシリアが私を魔女に仕立て上げるつもりです」 リリアの緊迫した声が、宿の一室に響いた。ユリウスは腕を組み、窓の外に広がる夕焼けを見つめながら、静かに頷いた。 「あの男の自白は確かだ。セシリアは三週間後、王都の広場で魔女裁判を開くつもりだ」 リリアは唇を噛んだ。魔女裁判――聖女の力を失った今、自分が魔女として断罪されれば、処刑は免れない。 「公爵様、どうすれば……」 ユリウスは振り返り、リリアの目を真っ直ぐに見つめた。 「まずは、証拠を固める。あの男の自白は録音魔道具に記録した。これでセシリアの陰謀を暴く材料は揃った」 リリアは安堵の息をついた。だが、それだけでは不十分だ。 「でも、魔女裁判は神殿の権威で行われます。証拠があっても、セシリアが神殿を掌握している限り、覆すのは難しい」 ユリウスは顎に手を当て、考え込んだ。 「そうだな。だからこそ、君の力が必要だ。聖女の力が本物だと証明できれば、神殿も無視できない」 リリアは拳を握りしめた。だが、自分の力はまだ完全ではない。 「公爵様、私は遺跡に行きたいのです。古代遺跡に、私の力を完全に取り戻す方法があるはずです」 ユリウスは眉をひそめた。 「遺跡は危険だ。魔物が潜み、罠も多い。君を一人で行かせるわけにはいかない」 リリアは首を振った。 「でも、私には時間がありません。三週間後には魔女裁判が始まる。それまでに力を取り戻さなければ」 ユリウスはため息をつき、リリアの肩に手を置いた。 「分かった。だが、私も同行する。君を一人で危険にさらすわけにはいかない」 リリアはその言葉に、胸が熱くなるのを感じた。 「公爵様、お言葉ですが、私は一人で行きます」 リリアはきっぱりと言い放った。ユリウスは驚いたように目を見開いた。 「何を言っている。危険すぎる」 「危険は承知しています。ですが、公爵様には王都でセシリアの動きを監視していただきたい。あなたがここを離れれば、セシリアが何をするか分かりません」 ユリウスは眉をひそめ、反論した。 「セシリアの監視は部下に任せられる。だが、君の安全は私が守る」 「私の安全よりも、王国の方が大事です。あなたは軍の総司令官でしょう?」 リリアの言葉に、ユリウスは一瞬言葉を詰まらせた。だが、すぐに強い口調で言い返した。 「王国を救うためには、君の力が必要だ。君が死ねば、すべてが終わる」 「だからこそ、私は力を取り戻さなければならないのです。一人で行けば、気が散らずに済みます」 「そんな理屈は通らない。遺跡には魔物がいる。罠もある。君一人では太刀打ちできない」 「私は聖女です。古代魔法の知識もあります。何とかなります」 「知識と実戦は違う。もしものことがあったら、どうする?」 「もしものことがあっても、それは私の選択です。公爵様に責任はありません」 リリアの頑なな態度に、ユリウスは苛立ちを募らせた。彼は壁に拳を打ち付け、声を荒げた。 「君はいつもそうだ。一人で背負い込もうとする。だが、もう一人じゃないんだぞ!」 リリアははっとした。ユリウスの言葉には、真剣な思いが込められていた。 「公爵様……」 「私は君を守ると決めた。君が何を言おうと、その決意は変わらない」 ユリウスは深く息を吸い、落ち着いた声で続けた。 「もし君がどうしても一人で行くと言うなら、私は力ずけでも止める。それでも行くか?」 リリアはユリウスの目を見つめた。その瞳には、揺るぎない決意があった。彼は本気だ。 「……そこまで言うなら、同行していただきます」 リリアは折れた。ユリウスはほっとしたように、微かに笑みを浮かべた。 「よし。では、準備を整えよう。明日の早朝に出発する」 リリアは頷いた。だが、心の中ではまだ納得していなかった。彼に迷惑をかけてしまう。 「公爵様、本当にいいのですか? あなたにはやるべきことがあるのでは?」 「今は君のことが最優先だ。それに、遺跡の調査は王国のためにもなる。一石二鳥だ」 ユリウスはそう言って、リリアの頭を軽く撫でた。リリアはその仕草に、顔が熱くなるのを感じた。 翌朝、リリアとユリウスは宿を出発した。村人たちが見送りに集まり、食料や地図を渡してくれた。 「聖女様、どうかお気をつけて」 「公爵様、聖女様をお守りください」 リリアは村人たちに笑顔で応え、ユリウスと共に村を後にした。 街道を歩きながら、ユリウスはリリアに話しかけた。 「そういえば、君に話していなかったことがある」 「何ですか?」 「君が幼い頃、森で迷ったことがあるだろう。あの時、君を救ったのは私だ」 リリアは足を止め、ユリウスを見つめた。 「え? あの時は、確か……通りがかりの騎士様が助けてくれたと聞いていました」 「その騎士が私だ。君は小さくて、泣きながら『お兄ちゃん、助けて』と言った。その言葉を今でも覚えている」 リリアは驚きで言葉を失った。あの日の記憶はおぼろげだが、優しい声と温かい手のひらは覚えている。 「まさか、公爵様だったなんて……」 「あの時から、君のことは気にかけていた。だが、私は公爵家の跡取りとして忙しく、君に会う機会がなかった」 ユリウスは少し寂しそうに微笑んだ。 「君が聖女として選ばれたと聞いた時は、嬉しかった。だが、その後、君が力を失ったと聞いて、いても立ってもいられなかった」 リリアは胸が締め付けられる思いだった。彼はこんなにも長い間、自分のことを想ってくれていたのか。 「公爵様……ありがとうございます」 リリアの目に涙が浮かんだ。ユリウスはそっと彼女の頬に手を伸ばし、涙を拭った。 「泣かなくていい。これからは、ずっとそばにいる」 その言葉に、リリアは心が温かくなるのを感じた。彼の想いの深さを知り、二人の絆はより強くなった。 「公爵様、私もあなたをお守りします。あなたの力になります」 リリアは力強く言った。ユリウスは微笑み、頷いた。 「ああ、頼りにしている」 二人は再び歩き出した。遺跡への道はまだ遠いが、二人でなら乗り越えられる気がした。 遺跡への道すがら、ユリウスはリリアに幼少期の話をもっと聞かせてくれた。彼がどのようにして騎士となったのか、なぜリリアを助けたのか。その話の一つ一つが、リリアの心に深く刻まれていった。 出発の準備中、リリアは公爵から、幼少期に彼が自分を救った時の詳しい話を聞き、彼の秘めた想いの深さを知る。
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