📖 捨てられた聖女は冷徹公爵の契約婚約者となり、偽りの恋で王国を救う
追放と契約・決戦前夜
光が収まると、セシリアは気絶して床に倒れ、魔道具は封印されて輝きを失っていた。リリアは疲労でよろめきながらも、ユリウスの支えで立ち上がった。彼女の胸には、覚醒した力の高鳴りと、家族を救えたかもしれないという希望が渦巻いていた。
「ユリウス様、早く地下牢へ。家族が待っています」
ユリウスは頷き、リリアの手を握った。その手は温かく、彼女の震えを静めてくれるようだった。二人は急ぎ足で、隠れ家の奥へと続く階段を下りた。
地下牢に続く扉を開けると、湿った空気と鉄の匂いが漂ってきた。リリアは足を速め、奥へと進む。すると、鉄格子の向こうに、見覚えのある姿があった。
「お父様! お母様!」
リリアは駆け寄り、格子にしがみついた。中では、クローフォード辺境伯夫妻が、疲れ果てた様子で座り込んでいた。彼らはリリアの声に顔を上げ、驚きと安堵の表情を浮かべる。
「リリア……無事だったのか」
「ええ、なんとか。今、助け出します」
ユリウスが鍵を開け、家族を解放した。リリアは両親と抱き合い、涙を流した。しかし、喜びも束の間、彼女はセシリアの言葉を思い出した。
「セシリアは、王国の上層部に協力者がいると言っていました。この陰謀は、もっと大きなものかもしれません」
ユリウスは眉をひそめ、顎に手を当てた。
「確かに、あの魔道具を用意するには、神殿や貴族の支援が必要だ。だが、今はまず、セシリアを尋問しよう。彼女なら、黒幕の名前を知っているかもしれない」
リリアは頷き、家族を安全な場所に避難させるようユリウスに頼んだ。そして、二人は気絶したセシリアの元へ戻った。
セシリアはまだ意識を失っていた。リリアは彼女を縛り上げ、水をかけて起こした。セシリアはゆっくりと目を覚まし、状況を理解すると、嘲笑を浮かべた。
「ふん、よくもやってくれたわね。でも、これで終わりだと思ったら大間違いよ」
「黙れ。お前の陰謀は全て暴かれた。黒幕は誰だ?」
ユリウスが鋭く問い詰めると、セシリアは不気味に笑った。
「教えると思って? 私が何かあれば、あなたたちもただでは済まないわ。王国の上層部には、私の協力者がいる。あなたたちの動きは全て筒抜けよ」
リリアはセシリアの脅しに動じなかった。彼女は静かに、しかし力強く言い放った。
「その協力者も、必ず暴き出してみせる。あなたの思い通りにはならないわ」
リリアは手をかざし、古代魔法のルーンを描き始めた。彼女の体から光が溢れ、セシリアの魔力を封じる拘束具を作り出した。セシリアは驚愕の表情を浮かべる。
「な、何を……!」
「あなたの魔力を封じた。これで、もう偽りの力は使えない」
リリアの声は冷たかったが、その目には確かな決意が宿っていた。セシリアは歯を食いしばり、憎しみのこもった視線をリリアに向けた。
セシリアを拘束した後、リリアはその場に崩れ落ちた。覚醒した力の反動か、体が震え、視界がぼやける。ユリウスはすぐに彼女を支え、優しく抱き寄せた。
「無理をするな。もう大丈夫だ」
リリアは彼の胸に顔を埋め、安堵の息を漏らした。彼の温もりが、疲れ切った心に染み渡る。
「ユリウス様……ありがとうございます。あなたがいてくれなければ、私は……」
「私も、君がいてくれたからこそ、ここまで来られた。君の強さに、何度も救われた」
ユリウスの言葉に、リリアの胸は熱くなった。彼はいつも冷徹だと思っていたが、その実、誰よりも情に厚い人物だった。彼女は彼への信頼を深め、同時に、この関係が契約だけのものではなくなりつつあることを感じていた。
「リリア」
ユリウスが真剣な声で呼びかけた。リリアが顔を上げると、彼は深い眼差しで彼女を見つめていた。
「辺境に戻ったら、正式にプロポーズをしたい」
リリアは息を呑んだ。彼の言葉は、契約婚約を超えた、真摯な想いの表れだった。彼女は頬を赤らめ、小さく頷いた。
「はい……お受けします」
その瞬間、二人の間に流れる空気が変わった。偽りの恋は、確かな絆へと変わりつつあった。
リリアはユリウスの言葉に、心が温かくなるのを感じた。しかし、その喜びも束の間、彼女はふと、セシリアの脅しが頭をよぎった。王国の上層部に協力者がいるという言葉。その正体を突き止めなければ、真の平和は訪れない。リリアは決意を新たにし、ユリウスを見上げた。
公爵がリリアに、辺境に戻ったら正式なプロポーズをしたいと告げ、リリアもそれを受け入れる覚悟を決める。






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