東の村の井戸の前で、リリアーナは封印を解いた直後、力の消耗が激しく、立っているのもやっとだった。エリアスが彼女を支え、疲労を心配する。
「リリアーナ、無理をするな。今は休むべきだ」
エリアスの腕が、彼女の腰を支える。その温もりが、かえって自分の力が空っぽになったことを実感させる。
「はい……でも、まだ調査が……」
リリアーナは、自分の足に力が入らないことに焦りを感じた。せっかく井戸の呪いを解いたのに、このままでは公爵の役に立てない。
「調査は明日からでいい。今日はもう戻ろう」
エリアスは、彼女を馬車まで導いた。村人たちが、感謝の言葉をかけながら見送る。リリアーナは、それに応えようとしたが、頭がぼんやりとして、うまく言葉が出てこない。
馬車に乗り込むと、エリアスは彼女を座らせ、自分の肩に寄りかからせた。
「すみません、公爵閣下。お力になれず」
「十分すぎるほど力を発揮してくれた。今は休むことが君の務めだ」
その言葉に、リリアーナは安心して、目を閉じた。
公爵邸に戻ると、リリアーナは自室で横になったが、なかなか眠れなかった。力の消耗が激しく、体が重い。彼女は、自分の力の不安定さを痛感していた。
(このままでは、公爵閣下のお役に立てない。もっと強くならなければ)
リリアーナは、ベッドの上で拳を握った。しかし、体はいうことを聞かず、少し動くだけで息が切れる。
そこに、エリアスが部屋を訪ねてきた。
「具合はどうだ?」
「はい、少し休めば回復します。ですが、明日からの調査に備えて、準備を整えたいのですが」
リリアーナは、起き上がろうとした。しかし、エリアスが制した。
「無理をするな。調査は、君の体調が戻ってからでいい」
「でも、領地の呪いを早く解かないと、民たちが苦しみ続けます」
リリアーナは、焦りをにじませた。東の村の井戸の呪いは解けたが、まだ領地のどこかに呪いが残っているかもしれない。
「君の力が不安定なまま調査を進めれば、また倒れることになる。それでは、かえって領民を危険にさらすことになるだろう」
エリアスの言葉は、もっともだった。リリアーナは、唇を噛んだ。
「……おっしゃる通りです。ですが、私は、あなたのお役に立ちたいのです」
「君は、もう十分に役に立っている。無理をして倒れることのほうが、私にとっては辛い」
エリアスは、リリアーナの手を握った。その手は、彼女の手よりも大きく、温かかった。
「私は、君に長くいてほしい。だから、休んでほしい」
その言葉に、リリアーナの心臓が高鳴った。彼は、自分のことを大切に思ってくれているのだ。
「……はい。では、明日から調査を始めましょう。今日は、休ませていただきます」
リリアーナは、素直に頷いた。エリアスは、安心したように微笑んだ。
「ああ。何か必要なものがあれば、言ってくれ」
エリアスは、そう言って部屋を出て行った。リリアーナは、彼の後ろ姿を見つめながら、思った。
(私は、この方のために強くなりたい。そして、この領地を守りたい)
彼女は、目を閉じ、休息を取ることにした。
その夜、リリアーナはなかなか眠れず、窓の外の月を見つめていた。力の消耗はまだ回復せず、体は重いままだ。
(私は、本当にこの領地を守れるのだろうか)
不安が頭をよぎる。しかし、そのとき、エリアスの言葉を思い出した。
「君が強かったからだ。私は、ただ君を信じただけだ」
その言葉が、彼女の心に温かい光を灯した。
(そうだ。私は一人じゃない。公爵閣下がいてくれる)
リリアーナは、そっと胸に手を当てた。彼の手の温もりを思い出す。
(私は、あなたのために生きたい。あなたの力になりたい)
その想いが、彼女の心を強くした。
すると、部屋のドアがノックされた。
「リリアーナ、起きているか?」
エリアスの声だ。リリアーナは、慌てて起き上がり、返事をした。
「はい、起きています」
「少し話がある。入ってもいいか?」
「はい」
エリアスが部屋に入ってきた。彼は、リリアーナのベッドのそばに立ち、優しい目で彼女を見つめた。
「体調はどうだ?」
「だいぶ良くなりました。明日には、調査を始められると思います」
リリアーナは、そう言ったが、エリアスは首を振った。
「いや、もう少し休め。調査は、明後日からでいい」
「でも……」
「君の体が大事だ。それに、明日は、私も領地の視察がある。君を連れて行くわけにはいかない」
エリアスは、そう言って微笑んだ。リリアーナは、その優しさに胸が熱くなった。
「……わかりました。では、明後日からお願いします」
「ああ。その代わり、今夜はゆっくり休め」
エリアスは、そう言って部屋を出て行こうとした。しかし、リリアーナは、彼を呼び止めた。
「公爵閣下」
「どうした?」
「……ありがとうございます。あなたに出会えて、私は幸せです」
リリアーナの言葉に、エリアスは少し驚いたように目を見開いた。しかし、すぐに優しい笑みを浮かべた。
「私もだ。君に出会えて、よかった」
その言葉に、リリアーナの心は温かく満たされた。彼女は、エリアスへの想いが、確かに恋心へと変わっていくのを感じた。
エリアスが部屋を出て行った後、リリアーナは、再びベッドに横たわった。今度は、心が軽くなり、すぐに眠りにつくことができた。
翌朝、リリアーナはすっかり回復し、朝食をとっていた。エリアスは、領地の視察に出かけており、屋敷には彼女と使用人たちだけがいた。
すると、一人の騎士が慌てて屋敷に駆け込んできた。
その夜、リリアーナが休んでいる間に、エリアスのもとに領地の境界で異変が起きたという報告が届く。






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