📖 追放された鑑定士、最強の【廃品回収】スキルでダンジョン都市を再建する
追放と再出発・代償
「お前の鑑定スキルは役立たずだ。今日限りでギルドを去れ」
ギルド長ガルドの冷たい宣告が、薄暗い執務室に響いた。リョウタは床に叩きつけられた革袋を呆然と見つめる。中には銅貨が数枚と、解雇を告げる書状だけが入っていた。
「ですが、俺はまだ……!」
「黙れ。お前の【鑑定】は精度が低く、依頼の足手まといになる。D級冒険者など、いくらでも代わりがいるのだ」
ガルドは顎で扉を示す。周囲の職員たちの視線が、哀れみと嘲笑を帯びて突き刺さる。リョウタは唇を噛みしめ、それ以上言葉を紡ぐことができなかった。
路地裏に放り出されたリョウタは、どしゃ降りの雨に打たれながら、壁にもたれかかった。追放された屈辱と、これからの不安が胸を締め付ける。
「……これから、どうすればいいんだ」
握りしめた拳には、幼い頃に両親を失った記憶が蘇る。ダンジョン事故で命を落とした父と母。自分だけが生き残った罪悪感が、いつも彼の心に影を落としていた。
リョウタは路地裏のゴミ捨て場に目をやった。壊れた魔導ランプが、雨に濡れて鈍く光っている。捨てられたものたちの墓場。かつて鑑定士見習いだった彼には、それがどれほどの価値を持つか見抜くことができた。
「……試してみるか」
リョウタはランプを拾い上げ、心の中で呟いた。【廃品回収】――それは追放された際に気づいた、自分に宿った新たなスキルだ。廃棄物を素材やアイテムに変換するという、奇妙な力。
「発動」
瞬間、リョウタの体内から魔力が急速に流れ出る。ランプが淡い光を放ち始めた。しかし、同時に激しい倦怠感が襲いかかる。
「ぐっ……!」
視界が揺らぎ、膝をつく。MPが一気に消耗している。このスキルは、代償が大きすぎる。連続使用は危険だと、本能が警告していた。
それでもリョウタは手を離さなかった。この力が、自分を変えるかもしれない。そんな期待が、恐怖を上回っていた。
ランプのひび割れが徐々に修復され、内部の魔導回路が再び輝きを取り戻していく。だが、その代償として、リョウタの意識は朦朧とし始めた。
「まずい……このままじゃ……」
倒れ込みそうになるのを必死に堪えながら、彼はランプの変化を見つめる。かつての【鑑定】では、ただの廃品としか映らなかったものが、今は確かな価値を帯びたアイテムへと生まれ変わろうとしている。
「これなら……もしかしたら……」
しかし、その思いも虚しく、リョウタの視界は暗転しそうになる。MP切れによる昏倒の危機。このまま倒れれば、路地裏で野垂れ死ぬかもしれない。
「誰か……助けて……」
その声は、雨音にかき消されて誰にも届かない。リョウタは力尽き、その場に崩れ落ちた。
「大丈夫ですか?」
柔らかな声が、リョウタの意識を引き戻した。目を開けると、そこには傘を差した若い女性が立っていた。上品なドレスに、整った顔立ち。一目で貴族の令嬢と分かる風貌だ。
「あ、あなたは……」
「私はエリナと申します。このランプの光に気づいて、こちらに参りました」
エリナはリョウタの手にあるランプを指さした。それは完全に修復され、温かな光を放っていた。
「これを……あなたが?」
「はい。スキルで……」
リョウタは自分の力でこれを成し遂げたのだと、かすかな誇りを感じた。だが、同時に強い疲労感が襲いかかる。
「お体が弱っておられるようですね。少し休みましょう」
エリナはリョウタの肩を支え、近くの軒先へと導いた。彼女の手は意外なほど力強く、そして温かかった。
「ありがとうございます。でも、どうしてこんな場所に?」
「私は設計士です。この街を再建するために、下町の視察をしておりました」
エリナの目は真剣だった。没落貴族の令嬢として、一族の再興を願う彼女の情熱が伝わってくる。
「再建……ですか」
「ええ。このダンジョン都市は、かつて栄えていたのです。しかし今は、廃墟と化しています。私はそれを、再び人々の希望の場にしたい」
リョウタは彼女の言葉に、胸の奥で何かが熱くなるのを感じた。自分もまた、この街の再建を夢見ていた。両親を失った場所だからこそ、もう一度輝かせたいと。
「あなたのスキル、もしかしたらその力になるかもしれません」
エリナはリョウタの目をまっすぐに見つめて言った。その瞳には、強い意志と、わずかな期待が宿っていた。
エリナはリョウタの手にあるランプを見つめ、そして再び彼の顔を見た。その表情は、何かを決意したように引き締まる。
エリナがリョウタに「あなたの力が必要です」と告げる。






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